第六十三話【ドレスより着物】 ページ17
『……』
｢……ん〜｣
｢……うーむ｣
｢……｣
私がドレスを着て三人の前に立つが浮かない顔｡
何だ？似合っていないのか｡
ならば似合っていないとはっきり云ってほしい｡
｢……Aちゃんはドレスというより着物かな｣
｢それ私も思いました｡やはりAは落ち着いた雰囲気のものが似合うかと｣
｢じゃあ姐さんに連絡するか｣
中原君がすぐさま携帯を出して外に出た｡
結局､店では何一つ購わずに車の乗って別の場所へ行く｡
『……今度は何処』
｢……ふふっ｣
太宰君は笑うだけで行き先を教えてくれない｡
次に来たのは着物を売っている店｡
そこには姐さんこと尾崎さんも居た｡
｢済まないね､紅葉君｣
｢……中也から連絡を貰った時は驚いた｡して､その小娘が……｣
『……私何も聞いてませんが』
じっとりと森医師を睨みつける｡
まさか着物を購うとは云わないだろうな？
｢好きなものを選ぶといい｣
『……いえ､要りません』
｢あ､これなんか如何だい？福沢殿と同じ色の着物だ｣
『……お父さん……と……同じ……』
色は慥かに同じ色だった｡
しかし無地ではなく綺麗な花があしらわれていて､とても上品なもの｡
『……綺麗』
思わず魅入っていると太宰君がその着物を手に取った｡
そのまま試着室らしい畳の部屋に連れて行かれて尾崎さんと二人きりになった｡
『えっ､えっ？あの……』
｢遠慮は良い､脱げ｣
『ちょっ……んな急に……』
尾崎さんは慣れた手つきで先程の着物を私に着付けてくれる｡
こんなに素敵な着物は初めてかもしれない｡
一度はお父さんと同じものが着たいとこっそり着物屋に行って購おうとしたが値段が凄すぎて諦めたのだ｡
｢ほれ､出来たぞ｣
鏡を見るとドレスなんかより何倍もよくしっくりときた｡
素敵な帯を選んで､着付けてくれた尾崎さんに感謝だ｡
『……素敵｡ありがとう､尾崎さん！』
｢……愛いのう｣
ふわりと笑う尾崎さんにまたもや嬉しくなる｡
畳の部屋を出ると男三人が振り返る｡
｢さすがは福沢殿の
｢ドレスより似合うじゃねぇか｣
二人の反応に嬉しくなる｡
太宰君に視線を向けると彼は少し固まっていた｡
『太宰君？』
私は彼に近寄った｡
彼は我に返り私の手を取る｡
｢A……綺麗だよ｣
太宰君がそう云って優しい目をした｡
.
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らしろ(プロフ) - よ だ かさん» コメントありがとうございます。更新楽しみにして下さりありがとうございます！これからも頑張ります。 (2020年5月31日 13時) (
レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
よ だ か(プロフ) - 続編おめでとうございます!! これからも更新を楽しみに待ってます！ (2020年5月31日 13時) (レス) id: c6fcdfc168 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らしろ | 作成日時：2020年5月31日 11時
