漆黒の狗は黒の時代でも困っていたそうです5【文スト】【芥川成り代わり】

第百九十四話『オ世話』 ページ37

それから少し眠った｡


別に眠たい訳ではなかったがシャワーを浴び､ソファで
横になった途端､眠ってしまったのだ｡




『……ん』




次に目を覚ましたのは次の日の正午だった｡
時刻を確認し､飛び起きるようにして執務室を出た｡





『……やらかした！』




昨日のミミック襲撃の報告を今日の午前中にする
予定だったのにも関わらず､大遅刻だ｡


数人の黒服から挨拶されるが今はそれどころではない｡
頭の中は混乱状態｡




『……っ､首領に……よ､呼ばれた……ので､来まし……た』




ゼェゼェと息を切らしてゴホゴホと咳をする｡

そんな芥川を見兼ねて扉の前に立っていた黒服は首領の部屋へと入っていった｡




｢……首領が部屋に這入るよう､仰っている｣




数秒経って出てきた黒服からそう告げられて
芥川は肩で息をしながら頷く｡

二､三度深呼吸して扉を叩敲した｡




森｢入り給え｣



『……失礼……しま……す』




一つ咳をして扉を開ける｡




『……首領､申し訳ありません』




頭を深く下げて謝る｡
最近､自分は誰かに謝ってばかりだ｡




森｢顔を上げなさい､芥川君｣




ゆっくりと顔を上げて森の顔を見る｡
彼は何処かへ行くのか外套を羽織り､鞄を持っていた｡




森｢ちょうど良かった｡
君を呼ぼうと思っていたところだったからね｣



『その､報告の件ですが……』



森｢ん？あぁ､その件は大丈夫｡太宰君から聞いてある｣




部下の失態を上司が補ってくれた､しかもあの太宰が｡
驚いたがなにか裏がありそうで怖い｡




『……僕が報告する筈でしたのに申し訳ありません』



森｢大丈夫､そういう時もある｡ところで君にお願いが｣



『……？』




お願い？一体何なのだろうか？

ミミック兵の捕縛か？
それともまた取引の仕事か？




森｢私は今から出掛けてくる｡
代わりにエリスちゃんのお世話をお願いしたいのだが……｣



『……へ？』




エリスの世話？
何故､自分が今彼女のお世話を？
別に嫌ではないが……




森｢エリスちゃんがお菓子を作りたいと駄々を捏ねてね｡
そうしたいのも山々だが生憎､仕事が入ってしまって……
代わりにお願いしてもいいかい？｣




慥かにお菓子作りなら出来るが……
仕事場にエリスを連れて行かなくてもいいのだろうか？




エ｢アクタガワ！｣



『……！エリス嬢』




後ろから抱き着いてきたエリス嬢の頭を撫でる｡
森は微笑んで“頼んだよ”と云って行ってしまった｡


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