漆黒の狗は黒の時代でも困っていたそうです5【文スト】【芥川成り代わり】

第百九十話『コノ感覚』 ページ33

｢貴君か……銃弾の効かぬ､黒衣の異能者と云うのは｣




口を殆ど動かさず声を発する男は
何か他のミミック兵と違う圧を放っていた｡




『……貴様はミミックの長か』



｢……いかにも､よく解ったな｣




ジャキッと黒服が瞬時にミミックの長と名乗る男に
銃口を向ける｡




『……何が目的だ』




羅生門が揺らめいてミミック長の手足を縛る｡
彼は微動だにせずただ､芥川を見詰めるだけ｡




｢……貴君と……手合わせを願いに来た｣



『……手合わせだと？』




何故､この場でミミックの長が直々に手合わせを申し込む？




｢……マフィアであろう者が怖気付いたか？｣



『……』




何か罠があるのか？

考えろ､何が最善で何が合理的なのか……




『……済まんな』




ポツリと呟いて男を睨む｡




『……僕は貴様と手合わせをしに来た訳では無い｡
仕事を終えて帰るところだったのだ｡
例え､手合わせを望まれていたとしても僕はミミックを
捕らえることしか出来ぬ』




シンッと張り詰める空気｡

それを破ったのはミミックの長｡




｢……乃公(おれ)の易い挑発に乗らないとはな｣



『……ふん､あれを挑発と云うのか』



｢…………まぁいい｣




何か間があったが､気にしない事にしよう｡

芥川はミミック長を羅生門でぐるぐる巻きにして持ち上げる｡




『……取り敢えず､此奴を連れて帰……』




一瞬だった｡


彼をぐるぐる巻きにしたかと思えば少しの隙に羅生門を解いて
拳銃を手にしていた｡




『伏せろ！！！』




芥川の叫びと共に銃声が三つ鳴った｡


四方八方に飛び散った黒い帯は
マフィアの黒服達の心臓を守っていた｡




『……くっ！』




なんなんだこの男は｡
俊敏に動けるなど聞いてない！




｢……ほぅ｣




芥川は黒服を守りながら羅生門に全神経を注ぎ込み
ミミック長の手を縛った｡


────というか､この男




｢……貴君､意外とやるな｣



『……こんな時に敵を誉めるかっ！』




芥川はミミック長の心臓を目掛けて黒刃を伸ばす｡




｢……｣




男がニヤリと笑った気がした｡


そして黒刃をすれすれで避けた｡



────この感じは……っ！




『……貴様は､真逆────』




この感覚は知っている｡

どれだけ攻撃しても､どれだけ不意をつこうとも全て躱される｡

悔しいと嘆けば頭を撫でられ“お前は十分強い”と優しい笑みを
浮かべる｡



────織田作之助と同じ異能力だ｡

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