漆黒の狗は黒の時代でも困っていたそうです5【文スト】【芥川成り代わり】

第百八十四話『得意ナコト』 ページ27

芥川は織田を見つけ直ぐに解毒薬を飲ませる｡
安吾に云われて持ってきてよかったと
安心したのも束の間､建物がまた爆発した｡




『……場所を移すか』




織田を羅生門で持ち上げて素早くこの場から去る｡
来る途中で黒服に車を持ってこさせるように
お願いしたのは正解だった｡
黒塗りの車に乗りこみ､急いで病院へと駆け込む｡




『……慎重に頼むぞ』




織田は幸い命の別状はなかった｡
しかし爆破の影響で火傷や擦り傷などあり
所々血が滲んでいた｡

早く向かっていれば無事だったのかもしれないのに……




『……っクソ』




拳を握って壁を殴る
爆発はミミックの仕業だ｡
しかし気を失ったのは安吾の仕業｡

どちらも許し難い事だが､自分がもう少し
何か出来たのでは無いのか？




太｢……芥川君｣




ハッと前を見ると太宰が心配そうに見ていた｡
いつからそこに……？




『……お疲れ様です､太宰さん｡
彼は命に別状はなく､眠っています』



太｢そうかい｣




それ以上は何も云わずに此方へ歩いてくる｡
芥川はただ､俯くことしかできない｡




太｢……おいで｣




両手を広げる太宰に芥川は怪訝な顔をする
太宰は全く動かない彼女に近づいてゆっくりと抱き締める｡




太｢大丈夫だ｡君だけが思い詰めることでは無い｣



『……しかし』



太｢君は悪くない､むしろ君の迅速な対応により織田作は｣



『違うんです！！』




太宰を押して､否定をする｡


そう､違う｡違うんだ｡
自分の判断で自分の行動で一人の命が危機に晒された｡
織田作だって無傷で救えたのかもしれない｡

それなのに“お前の所為ではない”と云われるのが
歯痒くてたまらない｡




『僕が！もっと……しっかりしていれば』



太｢……君は十分しっかりしているよ｣



『……っ､そんなこと……僕は本当ならば罰を受ける筈……』



太｢……芥川君｣





────パンッ！




乾いた音が病院の廊下に響く｡


右頬に痛みを感じて我に返る｡




太｢……いいかい､よく聞け｡誰も未来のことはわからない｡
“ああしていれば”や“もっとこうしていれば”などと
云うのは無意味だ｡
……ならばどうすればいいと思う？｣




『……どう……すれ､ば……？』




太宰の手が芥川の右頬に添えられる｡




太｢────足掻くんだよ｣



『……足掻く？』



太｢君の得意なことだろう？｣




ツゥ……と芥川の瞳から涙が零れた


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