漆黒の狗は黒の時代でも困っていたそうです5【文スト】【芥川成り代わり】

第百七十二話『オ嫁サン』 ページ15

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森｢……参ったねぇ｣



『……すみません』



森｢否､君が謝ることではないよ｡しかし､困ったものだよ｣




最上階､首領の部屋
任務の報告をして最近の太宰の素行について互いに意見を出し合っていた




『僕はどう行動すれば正解なんでしょうか｡あまり刺激的なことを云うと彼が何かもっとやらかしそうで怖いです』



森｢そうだねぇ｡良くも悪くも芥川の言葉や態度で彼は変わるからねぇ｣




森はふぅと溜息を吐いて苦笑
そして手元の書類を手に取って見た




森｢それにしても君の報告書はいつも完璧だね｡仕事も早いし……是非とも私の補佐を｣



太｢失礼します｣



『……！？』




突然扉が開いて太宰が入ってきた
ノックもせず森の顔を見らずに一直線に芥川に向かって歩いてきた




森｢何の用かな太宰君｣



太｢芥川君を連れ戻しに来ました｣



『僕は唯､首領に報告書を提出しに……』



太｢君は黙って｣




あまりの圧に口を閉ざすしかできない｡そんな芥川と太宰を見て森はニヤリと口角を上げる




森｢太宰君､提案があるんだが｣



太｢では私の用は済んだので芥川君と帰ります｣



森｢ちょっ､ちょっと待って｡芥川君を連れて行かないで｡提案があるから！｣




渋々足を止めた太宰に森はホッとした様子でごほんっと咳払いをする




太｢つまらなかったら帰ります｣



森｢大丈夫だよ｡実はね､太宰君にお見合いの話が｣



太｢帰ります｡行くよ､芥川君｣



『えっ』



森｢終わってない､まだ待って｡待ちなさい､そこでだ｡
芥川君をお嫁さんにするのはどうだい！？｣




シーンっと静まる室内
幸い見張りの黒服は外にいてこの話を聞いているのは森と太宰と芥川しかいない




太｢……Aちゃんを……お嫁さん……ふふっ､ふふふっ｣



『……首領､ぶん殴りますよ』



森｢温度差が激しいね｣




幸せそうに笑う太宰と般若顔の芥川
森は困りながらもいい話だと思うのにねぇ､と提案を撤回する様子はない




『僕は男です｡これからも男として』



太｢ではAちゃんが結婚できる歳になったら婚姻届を出し､式を挙げてもいいんですね｣



『えっ､冗談ですよね？』



森｢いいだろう｡但し､私に一言云うんだよ｣



太｢はーい｡では行こうか､Aちゃん｣



『えっ？僕の意見は？』




どうやら芥川の意見は聞かないようだ
ご機嫌な幹部に引き摺られ乍､笑顔の森を睨んだ｡


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