漆黒の狗は黒の時代でも困っていたそうです5【文スト】【芥川成り代わり】

第百七十一話『意味ノアルコト』 ページ14

太｢怖いかい？｣




冷たい声が背中に突き刺さる
当たり前だ､怖いに決まっている｡この男､ここ数週間で女をつまらない理由で殺しているのだから




『……無益』



太｢そう云われても仕方がないね｡でも私にとってはとても意味のあることだった｣




太宰は芥川が落とした本を拾い上げて歩き出す
その瞳はとてもとても黒かった




太｢君が周りにとやかく云われて傷つかないように｣



『僕はそんなにヤワではありません』



太｢しかし云い返さずに溜め込むタイプだろう？また倒れられても困る｣




如何しよう､全て当たってる……
しかしだからといってこの女を殺すのは間違っている




『しかしそれでも』



太｢芥川君､この話は終わり｣




芥川の頭にポンっと優しく本が乗る
太宰の声が真後ろから聞こえる｡その声は明るくて芥川は強ばっていた顔を緩くする




『……』



太｢拗ねてる？｣



『……違います』



太｢可愛い……｣



『黙ってください､変態包帯糞悪魔』



太｢でたツンデレ｣




そろそろ本気で太宰の頭を殴ってやりたいと思った
ちらりと後ろを見れば年相応に笑う彼の顔に何故か口が開かなかった




『……本』



太｢ふふ､本を読もう｣




暫く見つめ……否､数分だけ目を合わせた後､太宰から本を受け取りソファに座る
太宰は芥川の隣をべったりとくっつき離れない




『……ずっとこのままですか』



太｢うん､このまま｣




この男､もしやヤンデレに突っ走っていくのではないかと不安になるが､嬉しそうに微笑む太宰に芥川は何も云わなかった




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『……的中､か』




さらに一ヶ月経った頃
最近ポートマフィアの構成員の女性十八名、男性六名が消息不明になった数日後に遺体となり発見される事件があった




『太宰さん､つい昨日も僕にガンを飛ばしていた構成員が消えた模様ですが､何か知りません？』




呑気に仕事もせずに芥川の隣で寛いでいる太宰に視線を向ける
彼は芥川をちらりと見て黒いオーラを出す




太｢知ってどうする？｣



『……別にどう､って訳じゃ』



太｢じゃあいいだろう？その男の話をするな｣




やっぱり此奴が犯人だ｡芥川は一言も“男”などと云っていないし､その構成員はまだ無断欠勤という情報しかないのだ
しかもまだこれは芥川と森しか知らない情報




『首領が頭を抱えてますよ』



太｢抱えさせとけばいいさ｣




何を云っても無駄だなと芥川は頭を悩ませた


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