第七話【宝箱と宝物】 ページ8
────数年後
『龍頭抗争?』
「そうだ。今この街は裏社会の抗争が盛んだ。日が暮れるまでには必ず家に」
『なにそれ面白そう』
「聞け」
────夕刻
お父さんと公園で散歩している途中でそんな会話をした
“龍頭抗争”かぁ、なんて面白そうな言葉なのだろうか
『それ裏社会の人しか参加しちゃ駄目なの?』
「……は?」
『これを機に探偵社も裏社会に進出し』
云い終わる前に頭を叩かれた
スパンッ!と勢い良くだ
『……勿論、冗談だよ?もぉお父さんったら〜』
「冗談でも止せ。武装探偵社は私の宝箱だ」
『……宝箱?宝物じゃなくて?』
「宝物はお前達だ……探偵社があるからAも乱歩も与謝野君もいる。故に、失いたくない」
思いがけない言葉に足が止まる
嗚呼、何でこの人の心は温かいのだろうか
『それは私も同じだよ。福沢さんがお父さんになった日から……否、出会った時から私のいるこの世界は宝の箱となった。
唯のガラクタばかり入っていものじゃなくてキラキラして温かい宝物がたくさん』
本当ならば私はきっと政府に“龍頭抗争”を止めろと厭々ながら任務を全うしていただろう
やりたくもない殺しをして、上からのうんざりする程の罵声を浴びせられ、生きる意味など探す気にもなれない儘、この世界に絶望していただろう
『お父さん。檻から連れ出してくれて、私に宝箱をくれて、その中身を輝かせてくれて……ありがとう』
あまり口に出さない言葉を零して照れる
お父さんも照れたような素振りを見せて私に手を差し出す
『……?』
「もう日が暮れる。私の手を掴んでおけ、これから商店街を通る。逸れるな」
『ふふっ、逸れませんよ〜』
手を掴んでお父さんにくっつく。やっぱり隣は安心する
商店街を歩いて咖喱の匂いがして今晩のご飯を思いついた
『今日は昨日の残りの肉じゃがを咖喱にするね』
「咖喱か。乱歩が喜ぶな……」
『乱歩君は甘い甘い咖喱が好きだもんねぇ』
料理当番の私は最近、腕に磨きをかけた
レシピ本を購ってもらい新しい料理に挑戦中
「昨日の肉じゃがも美味かった。じゃが芋が柔らかくて驚いた」
『でしょ?私だって本気を出せば……』
視界の端に見慣れた後ろ姿を見つけた
白い長髪、白い外套、背の高い……
「……A?」
『……ふふ、なんでも出来るんだよ』
今は抗争真っ只中だから“彼”だろうと確信し、家に帰った
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らしろ(プロフ) - 有栖川.さん» コメントありがとうございます。可愛いと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります、引き続きお楽しみ下さい! (2020年5月26日 21時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 織田作、、可愛い…。更新頑張ってください!! (2020年5月26日 19時) (レス) id: 365395094b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月21日 18時