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第二話【名前を与えられた日】 ページ3

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「……そういえば俺はお前の名前を知らないな」




『なんでもいいよ。なまえなんて……ただ、よぶだけのものだし』




「そうはいかん。名前はちゃんとその人を想い、付ける大切な贈り物だ」




『ふーん』





次の日
ようじんぼうさん基、福沢さんは来てくれた
来てくれた瞬間、嬉しくって夢じゃないか?と自分の頬を抓ったのは内緒だ


そして今、名前について話しているが、別に大した話題じゃないんだけど……





『そんなことより〜』




「そんなことじゃない。名前は」




『もぉ〜、だったら福沢さんがつけてよ。べつに“氷柱の女神”だから“つらら”でもいいんだよ』




「名前じゃないだろ」




『あ、“らら”は?』




「却下だ」





ぶーっと膨れていると福沢さんは懐から一冊の本を取り出した。
気になってじっと見てると彼はなにか思いついたような顔をした。





「……A」




『……A?なあにそれ』




「お前の名だ」





福沢さんは手に持っていた本を私に差し出した
それを受け取って開くが難しい漢字ばかりで何を書いてるかさっぱりわからない




『……なんで“A”なの?』




「その本の主人公が“A”という名だからだ。“A”は強い正義感を持つ者だ」




『わたしもそうなってほしいの?』




「凡てがそう為れとは云わんが……自分らしく、正しい道を進む人になれ」





あまりにもちゃんとした名前をもらって正直驚いた
こんな素敵な名前を私が貰ってもいいのだろうか?
この本の主人公のように正義感の強い人になれるのだろうか





『この、ほんは……』




「その本は、とある恩師から貰ってな。
俺はもう遣わないから、お前が……Aが持っていろ」




『いいの?』




「勿論だ」




『ふふ、ありがと。はやく、よめるようになりたいな』




「なら俺が文字を教える」





その言葉に目をぱちくりさせる
福沢さんの瞳は何も企みもなく真っ直ぐに私を見ていた



……この人なら





『うん、おしえて。“わからない”をなくしたいの。たくさん、いろんなことを……しりたい!』




「……ああ。判った」





福沢さんの大きい手が檻の中にいる私の頭を撫でた
心地よくて擽ったくて自然と笑みがこぼれた





────初めて名前を与えられた日




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第三話【自由に外を歩いた日】→←第一話【約束した日】



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らしろ(プロフ) - 有栖川.さん» コメントありがとうございます。可愛いと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります、引き続きお楽しみ下さい! (2020年5月26日 21時) (レス) id: 2b7c5de986 (このIDを非表示/違反報告)
有栖川.(プロフ) - 織田作、、可愛い…。更新頑張ってください!! (2020年5月26日 19時) (レス) id: 365395094b (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:らしろ | 作成日時:2019年6月21日 18時

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