第十四話『或ル少女ノ昔話』 ページ15
『……理解出来ぬ』
キッパリ云い、ケーキをのせた皿と紅茶をお盆に置き、鏡花の横を通って机の前に座った
『自惚れ過ぎだ。貴様の身を心配?僕が温かい?戯れ言を』
鏡「……」
『ほら此れはロールケーキ、因みに中のクリームはな苺だ。紅茶はアールグレイ、美味いぞ』
フォークを置いて鏡花を座るよう促すが頑なに動こうとしない
『鏡花、無駄な詮索はやめろ。僕が貴様に構うのは姐さんに頼まれたからだ』
鏡「私は貴方のことは好きじゃない」
『何?』
鏡「私は芥川龍之介という男は好きじゃない。けど、芥川Aは好き。如何してそうやって人格を分けてるの?」
『……』
突然のカミングアウトと疑問をぶつけられ頭を抱える
『鏡花』
鏡「何」
『これは、或る少女の話……聞いてくれるか』
鏡花は少し驚いた顔をして頷き
芥川の向かい側に座った
『……少女は、元々は孤児だった。貧民街で妹と仲間と一緒に住んでいた。けれど少女が十四の時、仲間が殺された』
鏡「……誰に」
『黒い男達に……マフィアの構成員だったのか?だから復讐しようと其奴等を探した。そして或る男に出会った、その人はマフィアの人間だった』
芥川の瞳が黒く濁る
鏡花はその目を見て眉を顰めた
鏡「その男が貴女をマフィアに引き入れた……」
『その通り。まぁ少女はその男の云うことを聞かない問題児だった』
鏡「……じゃあ芥川龍之介って」
『マフィアでの自分。“芥川龍之介”にならないと人殺しなんて出来やしない。自分を偽らないとマフィアで生きていけないの』
紅茶を飲み一息ついた芥川
その表情はやつれているように見えた
鏡「“芥川A”は人殺しを好まない温かくて優しい人」
『……そう思えばいい』
鏡「やっぱり私は芥川Aが好き」
『……』
微笑んだ芥川は鏡花が今まで見た笑顔の中でも
一番優しい表情だった
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デザートを食べ鏡花を牢屋ではなく
執務室の簡易ベッドに寝かせた
鏡「ねぇ、A」
『……呼び捨てか』
鏡「……電車テロ、本当にやるの?」
『やりたくないか』
鏡「……」
芥川の問いに鏡花は口を閉ざす
これで“やりたくない”と云えばクビが飛ぶ。けれど“やりたい”なんて云いたくもないだろう
『……愚問だな。これも任務だ』
鏡「……うん」
そう返事をした後、鏡花は静かに目を閉じた
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らむしろっぷ(プロフ) - りんさん» いいですね!私は忙しくてその日に食べれなかったです……(;_;) (2018年6月27日 14時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 太斎さんの誕生日ケーキ食べましたよ(*´∇`*) (2018年6月25日 23時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
らむしろっぷ(プロフ) - りんさん» 私の一番の推しは太宰さんです!カッコイイですよね!! (2018年6月25日 23時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - 太斎さんもいいですよね (2018年6月23日 23時) (レス) id: 5016550d2e (このIDを非表示/違反報告)
らむしろっぷ(プロフ) - りんさん» 次巻に期待しましょう!それまで信じましょう(;_;) (2018年6月23日 23時) (レス) id: 8b3e2d1361 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らむしろっぷ | 作成日時:2018年5月19日 20時