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「これがほんの少し先の未来を歩んだ先輩のお言葉」
と俺がバッチバチに先輩らしく台詞をキメた後タイミングを見計ったかのようにけたたましく俺の携帯電話の着信音が個室中に鳴り響いた。
ちょっとごめんね、と佐久間に詫びてその場で出る。
その場で出る、がこの場では正しいのだろう。
「まだ佐久間と飲んでんの?」
さっきまで固有名詞を出さない優しさとか言ってた俺達もてんでびっくりしちゃうくらいどストレートなお玉様にひっくり返りそうになる。
その場で出る、がこの場では正しいを体現したかのような玉の声を
「もうそろそろ帰ろうとしてたって!」
と必死になだめながら、ビールをちびちび飲みながら半ば呆れているように頬杖をついてこちらを見る佐久間には悪いけどこれにてお開きという運びになった。
「宮田くん今日はありがとうございました!!!!!」
お会計を済ませ、店を出た後佐久間が直角90度寸分狂いもなくピシッとお辞儀をした。
さすが脅威の身体能力とグループきってのダンス担当なだけあって体の端から端までスッと伸びきっており、見ていて美しい。
「いいよ、俺が誘ったんだし気にしないで」
そもそも佐久間を慰めるために今日の会があったんだからね、という台詞は心の中だけに留めておいてふわっと笑う。
お酒のせいで笑顔がふにゃふにゃしてるかもしれない。
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作者名:楓 | 作成日時:2021年6月12日 23時