昇る魚 (ページ40)

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「このお店お魚がおいしいんだよね〜」

曖昧そうに笑った佐久間に気づかないふりをして、魚かとただの黒い焼き魚の身を箸でえぐりながらふと肉より魚派だって昔玉と2人で出演したラジオで玉が言ってた事を思い出す。

そういえば玉昔なんでもさん付けしてて「お魚さん」とか言ってたっけ？可愛かったなぁ〜ってニヤニヤしてしまう。

あれ？お酒のせいでだいぶ脈絡ない？？

そうニヤニヤしながら魚の身をほぐしているのに夢中であれだけ元気そうだった佐久間の顔が徐々に曇っていくのに気づかなかった。

否、さっきも言ったけど佐久間が少し元気なさそうで時折目が潤んでいて曖昧に微笑んでいた事も全部気づいてたけど気づかないふりをしていた。

　
前言撤回だ。

人は俺の優しさを冷たいという人がいる。

冷たいかはともかく、俺の優しさは狡い。

宮田くんは…と佐久間の口から溢れる次の言葉が出てきませんようにと我ながら後輩を労わろうとしている先輩としてどうなんだ？と俯瞰的にぼんやりと思う。

「宮田くんは今までずっと隣にいた人が遠くへ行っちゃったような気がした事ある？？？」

そこにはいつもの明るく人を楽しませるのに一生懸命な佐久間はいない。

酔っ払って火照った佐久間の頬のピンク色がこちらを向けて、まるで先程までの自分の狡さを全部見抜いた上で全てを許してくれるだろうと言わんばかりに爛々と光り輝いていた。