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「胡蝶!」



「あらあら、随分と喧騒変えて……。Aさん?」






葵達に指示を出し終えて、自身の机の前で作業を始めた胡蝶の背中に、焦ったような煉獄の声がかかる。



先ほど直接薬を渡したばかりなのだが、何か問題でもあっただろうか。




ここには怪我人もいるのだし、あまり大きな声は控えて欲しいのだがと、振り返ると、そこには俄かに信じられないような光景が目に入って、彼女の声はほんの数秒失われた。




声の主─煉獄が両の手に抱えていたのは、小さな少女、と言っても立派な柱の1人、だった。
何時もなら、丁寧ながら煩い程までに纏わり付いてくるくる回る口を閉じようともしないAが。想い人を想像してか、いつも頬をほんのり赤らめているAが。



真っ青な顔で煉獄の腕の中で苦しそうに口を結び、横たわっていたのだ。




「あらあらあら。どうしたのでしょう」



「Aの鴉は、肋骨を骨折していると」



「取り敢えず、こちらのベッドに寝かせてください」




珍しく、煉獄は動揺しているのか、それとも守ろうとしているのか、なかなかその手から少女を離そうとしない姿に、胡蝶はクスリと笑った。

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作者名:evoli | 作成日時:2020年1月23日 2時

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