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炭治郎は、廊下で足を止めていた。
手に持った本は重いが、我慢できないほどではない。
このような場面で息を殺すのにも、慣れていないができない訳ではない。
呼吸だ。呼吸が大事なんだ。
炭治郎は1度大きく息を吸った。
「何故だ、胡蝶。
君は先程まで彼女と話していたじゃないか」
星柱の病室前。
炎柱の大きな声と、その向かいに立つ蟲柱。
炭治郎には何となく、話が掴めてしまったし、炎柱の言うことは、全くその予想と違わない。
炭治郎は息を吐いた。
「私はAさんを診ていただけです」
少し呆れたような蟲柱。
炭治郎は息を吸った。
「……。だが、昨日、竈門少年は見舞いに行ったと言うじゃないか!」
いきなり名前の出てきた炭治郎は、むせそうになるのを堪えた。
集中集中。呼吸を乱すな。
その話は、善逸と伊之助にしかしていなかったのだけれどどこから情報が漏れたのだろう。
よりによって1番耳に入って欲しくない人の元まで。
炭治郎は息を吐いた。
「竈門くんは、Aさんに入室を許可されていたからです」
「何故Aは俺を入れてくれないのだ」
「はぁ…。Aさんが嫌だと言うからです」
「いや…………」
炭治郎は息を………噴き出した。
まさかあの炎柱が、こんなにも弱々しい声を出すのだろうか。
蟲柱の溜息の理由だってわかって、炭治郎は少し同情した。
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作者名:evoli | 作成日時:2020年1月23日 2時