13 音柱 ページ12
怪我も治って機能回復訓練も一通り終え、前線復帰出来るようになった時分に、ふと煉獄さんに出会えて、心の声がそのまんま漏れ出てしまった。
「煉獄さん〜、結婚しましょうよ〜。
お義父様にご挨拶をしたいので、お屋敷に案内してくださいよ」
「屋敷には、俺の大切な弟がいる故、勘弁していただきたい!
それに、そういう言葉は、女性が無闇矢鱈に使うものではないぞ!」
無闇矢鱈なんかじゃないのに。
貴方が煉獄さんだから、言うのに。
けれど自分の立ち位置は分かっているつもりなので、ただ笑うだけにとどめた。
「また振られてやんの」
「煩いですよ、宇髄さん。傷心中の乙女を、慰めてあげようとは思わないんですか?」
かなり高い位置から降ってきた声に、痛いほど首を上へ向けた。
「生憎、俺には愛する嫁がいるもんで。
お前なんかに食指は動かないナァ」
ニタリと口角を上げる宇髄さんは確かに整った顔をしているが、私の好い人は煉獄さんなので遠慮しておきます。
宇髄さんも、それは知っているから、ただからかうように笑う。
「別に、私だって宇髄さんに好かれようとは思いません。
あっ、でもいいお店を見つけたんです、行きません?」
「ド派手に美味い所なんだろうな?」
くいと、お酒を呷るような真似をする宇髄さんはもう既に意識を呑み屋に向けているのだろう、何を頼もうか、なんて言っている。
「任せてください。美味しいですよ。
今日は仲介料で、奢ってください」
「ちゃっかりしてやがる。今回だけだぞ」
「わぁい!宇髄さん、男前〜」
─もう今日はなんもないのか?
はい、もともと非番だったんです。
なんて会話をしながら、私たちはまだ明るいうちから食べたいメニューなんかを語り合う。
肩に乗せられた宇髄さんの腕のあまりの筋肉質さに、邪魔ですねなんて言いながら私たちは煉獄さんに背を向ける。
だから、私は気付かなかった。
煉獄さんがずっと私たちの背中を見ていたことも。
宇髄さんがそんな煉獄さんを振り返って、舌を出したことも。
「なんだ。矢張り俺でなくとも良いのではないか」
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音柱は主人公ちゃんに恋愛感情は抱いてはいないけれど、幸せになってほしいと思っていると嬉しい。
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作者名:evoli | 作成日時:2020年1月23日 2時