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反動でフォークからラズベリーパイが落ちる。
飛び込んできたものの正体は佐久間だった。
胸倉を掴んで今まさに喉元を噛みちぎらんとばかりに歯をギリギリさせる音が聞こえる。
目黒「…酷いなぁ、康二。まるで主様を「毒」とでも言いたげな」
向井「んは、君らこそ脳味噌足りてないんとちゃう?何も中毒は「毒」だけに起こるもんやない」
胸倉を掴まれているにもかかわらず、向井は一切の動揺を見せる事なく、平然と目黒の言葉に返答をする。

カツン、という音が鳴り響く。阿部が立ち上がった音だった。
口元が微かに動く。声を出される事のない言葉は、それでも不思議とその微かな動きだけで何を意味するかはわかるものだった。
阿部【Leave it(離れなさい)
ヒュン、と空を切る音のコンマ数秒後、ペシン、という何かを叩きつける音が聞こえた。
佐久間は痛みに本当の犬のような声をあげると、向井から手を離す。

阿部の手元にはいつの間にか黒い鞭が握られていた。
目黒「…馬鹿だね、主様の機嫌を損ねるなんて」
見下すように言い放つ目黒と睨みつける佐久間を余所に、阿部は立ち上がると少しだけ乱れた向井の襟元をきっちりと直す。
向井「ありがとう、あべちゃん」
読めない表情の阿部は、やはり変わらぬ微笑のままで、床に落ちたラズベリーパイを一瞥すると目黒の方を向き杖を鳴らした。

そのまま犬がボールを咥えるようにパイを口に含んだ目黒を見て、阿部はその黒い髪を撫でる。
目黒(…あぁ、やっぱり主様は綺麗だなぁ)
お腹に着いている傷がなかったら、今すぐにでも永遠にしたいのに。
そう恍惚な表情を浮かべる目黒を見ながら、向井はもう温くなってしまった紅茶を喉に流し込んだ。

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ch(プロフ) - 湊都様 はじめまして。唐突なコメント失礼致します。本日のmmabラジオを聞いて湊都様の主様と番犬(敬愛心)がまさにそれだと思いこの作品書いてくださったお礼をなんとしてお伝えしなければと馳せ参じました。主様と番犬共大好きです。これからも創作頑張ってください。 (2020年8月27日 23時) (レス) id: b9b0fe572d (このIDを非表示/違反報告)
皇玲太(プロフ) - 毎度思いますけど、ホント最高です (2020年8月22日 18時) (レス) id: 293e872a7a (このIDを非表示/違反報告)
ゆづ - お疲れ様でした!今回も楽しませていただきました!このシリーズたちの文庫版が欲しい…。次回も楽しみにしています! (2020年8月22日 0時) (レス) id: deb2d46d42 (このIDを非表示/違反報告)
湊都(プロフ) - ルカさん» ご指摘ありがとうございます!直させて頂きます! (2020年8月12日 10時) (レス) id: a535406d45 (このIDを非表示/違反報告)
ルカ(プロフ) - 【笑みを絶やし続ける】だと【笑っていない状態が続く】ことを意味するのだと思うのですが、、、間違っていたらすみません。 (2020年8月12日 9時) (レス) id: d9cf94c870 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:湊都 | 作成日時:2020年8月4日 9時

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