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大貴「いのちゃん…?」
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大貴の目が見開く。
伊野尾先輩はその視線に気づいているはずなのに
それを無視して、助手席を開けてくれた。
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「じゃあ、私はこれで。」
大貴「ま、待って…」
「すみません伊野尾先輩、お待たせしました。」
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視界の端に私を捕まえようとする大貴の手が映ったけど、
私はそれを振り払って、車の助手席に乗り込む。
ドアも窓もきっちり閉めて、大貴の声が聞こえないように
シャットアウトして。
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車が走り出す。
しばらくすると、伊野尾先輩が
助手席の窓を開けてくれた。
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慧「…俺、何も言ってないからね。」
「…分かってます。」
慧「その子の父親ってやっぱり…」
「この子は、私の子です。」
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そっか、と伊野尾先輩が呟く。
そして、赤信号になって車が停まったとき、
伊野尾先輩がチラリと私を見た。
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慧「…ほんと、大ちゃんの言う通りだ。」
「え…」
慧「また下唇噛んでる。」
「…っ。」
慧「我慢すると、お腹の子に悪いよ?」
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片手で軽く頭を撫でられた後、車が発進する。
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“下唇を噛むのは、我慢してるとき”
前に伊野尾先輩に指摘された癖。
あのとき、大貴から聞いてないって言ってたのに…
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「…っ。」
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気付かれてたのが、何だかいやで。
私は、わざとらしく唇を伸ばして
自分を落ち着かせるために景色を眺めた…
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愛(プロフ) - おはようございます♪何回見ても泣けるお話です(泣)続編見たいです★楽しみにしてます(•‿•) (6月17日 7時) (レス) @page49 id: 170da3309e (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - ぱんださん» お返事遅くなりすぎて申し訳ございません…!何度も読み返してくださりありがとうございます。作った者としてこれ以上無い褒め言葉です。マイペース更新になりますがよろしくお願いいたします。 (5月27日 22時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
ぱんだ(プロフ) - 私はこの作品のファンとして毎度更新を楽しみにしていました。終盤は涙が止まらなくなることも多く、気づけばこの作品にのめり込み、何度も読み返しています。そして何度読んでも毎度号泣しています。今作も楽しく拝読しています。これからも陰ながら応援しています。 (2023年2月5日 7時) (レス) id: 399b55da19 (このIDを非表示/違反報告)
まりも(プロフ) - るん。さん» 嬉しいコメントありがとうございます!楽しんでいただけて嬉しいです。ちょうど今新作公開したので、お時間あればお越しください。 (2022年12月31日 18時) (レス) id: 9a2317564f (このIDを非表示/違反報告)
るん。 - 本当に本当に本当にお疲れ様でした。最初から最後までとても楽しく読ませて頂きました。小説の本を読んでるかのように読みやすく感情移入しやすかったです。1番好きな小説です!また新作できた際には拝見させていただきます! (2022年12月18日 11時) (レス) @page49 id: fde368863d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まりも | 作成日時:2022年10月8日 0時