第三十七話 独言 ページ39
｢本当にそんなこと致しませんよ。｣
拍子抜けしたとでも言いそうな土井先生を一瞥し、手を合わせご馳走様でしたと告げる。
先の土井先生の言葉を思い出す。
ここにいるみんなはテンプレの様に私に嫌がらないのかと聞いてくるのが面白くてつい笑いそうになる。
沈黙を破る合図だと言わんばかりに白南風が通り過ぎ、私の髪をなびかせた。
｢私はこの後事務の仕事もありますし食器も洗わないとなのでお先に失礼しますね。｣
この感覚だともう少しでお昼休みも終わるだろう。
その場に土井先生を残し、ゴミと食器を持って水場へ向かった。
いつも自分から去っているばかりである。
そういえば天女の部屋には箸があるんだな。
最悪、あの大量にある簪達で食べようかとも思っていたが普通にあったので有難く使わせてもらった。
それにしても多いよなあ、あの貢物の量。
複数の天女の分だとしても多すぎる。
この時代、あれらが特別安いわけでも無さそうだしそれに見た感じ高そうな見た目もしていた。
これをあげた奴らは庶民じゃないんだろうな〜
“気がついたらそばに居た。”
ねえ…あの日記に書かれていた話である。
もはや彼女らは彼らにとって解毒剤の無い、服用した途端に全身に毒がまわる様な即効性の高い甘い毒である。
天女が来る度警戒して、それでも堕ちて、人を傷つけて、そんな事を何人もが繰り返して。
傍から見たらさぞかし滑稽だろう。
Aは小馬鹿にしたように鼻で笑った。
歩きながら中身の無いカップを眺める。
こんな世界じゃ味覚こそが唯一現実へ引き返してくれるものだろう。
私の持っているこれもお菓子もみんなここが長い長い夢ではなく冷たい現実であることを実感させる。
冷たい水が手を伝い落ち地面に染みを作りながら食器達を洗う。
梅雨も明け方、暑い日差しが皮膚を刺し、汗が首を伝う。
この季節にこの着物は無いよな〜。
後でシナ先生に打診でもしてみるか。
袖の方をちらりと見ると飴を入れていた事を思い出した。
袖から飴を取り出し、口の中に放り込みカラコロと転がすとあの甘さが口の中いっぱいに広がる。
この世界の甘味処は行ったことが無いな。
どんな味がするんだろうか。
やはり味は薄めなのか。気になる〜。
今度学園長先生に外出の許可を頂いてから町へ行ってみようか。
｢それにしてもお団子、食べてみたいなあ…｣
事務室に向かう途中そう呟いた。
．
｢…団子か。｣
こういうのは大抵、誰かに聞かれているものである。
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うん！ - ほうじ茶さん» お褒め頂きありがとうございます。これからも楽しんでいただけると幸いです (1月21日 2時) (
レス) id: 7fb5738de5 (このIDを非表示/違反報告)
ほうじ茶 - 今まで読んだ天女作品の中でダントツ面白いです！こういう性格の子好きです (1月18日 23時) (レス) id: 47dba8b665 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うん！ | 作成日時：2023年12月24日 1時
