檸檬の香りに沈む３【アンナチュラル 】

敵の姿−09− ページ39

その頃、久部は週間ジャーナルの末次に呼ばれUDIの外にいた。


「おう！来ちゃった」

「いやいやいや」

「結構デカいんだね、UDIって」

「な、なんでいるんですか？」

「社会科見学。渾身の記事を握り潰された腹いせに」

「記事？」

「権力に負けたー！ハハハッ」


そういと、Ａ４サイズの茶封筒を久部に渡した。


「はい、これ。宍戸がお前に渡してくれってさ。お前ら一体どういう関係？」

「どういうっていうか……」


２人は場所を変え、久部はカフェで経緯を話す。


「宍戸さんも事件を追ってて、俺は協力出来ないって電話で伝えたんですけど」

「それでこの手紙か」


貼り付けられたポストイットにはこう書かれている。

“中堂が犯人じゃないなら、糀谷夕希子を殺したのは誰か。同一犯かもしれない事件を探してみた”

新聞や週刊誌の記事をコピーした物にアルファベットが書かれている。久部はそれを一つ一つ読み上げた。


「Drill」

「Beat」

「Knife」

「Crush syudromd」

「どれも若い女が殺された未解決事件。しかもこれ、全部宍戸が書いた記事」

「掲載誌も署名も全部違いますけど」

「ハハッ、俺にはわかんだよ」


タバコに火をつけると末次は記事を読みあげる。


「“看護師になるという彼女のたち美しく健気な夢は犯人の暗い願望の前に儚く砕け散った”これ、こういう白々しいポエム。どっからかスクープを拾って来て名前を変えて方々に売りつける。それも決まって若い女の殺人事件。気味悪いよな？」

「あの……これはなんですか？」


そう言ってピンクのカバのイラストを見せた。


「さあ？」


末次は首を傾げた。



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