檸檬の香りに沈む３【アンナチュラル 】

敵の姿−02− ページ32

そして久部が撮った口腔内写真を確認する。


『はっきりついてますね』

「今までみた中で１番だ。全体に模様が出てる」

「これ口の中に何か押し込まれてた？」


ミコトの疑問に、久部は解剖後その口腔内写真を元にＣＧで入れられてたものを再現すると、ボールのようなものが浮かんできた。







【週間ジャーナル特集記事】
「１０名死亡火災ビルの隣で発見！
スーツケース詰めされた女性遺体」

そう見出しが出てる記事のコピーを中堂は食い入るように見ていた。

会議室では警察の毛利と向島を迎えて、今回の事件について向島が状況を説明し始める。


「あの空き家は半年前まで飲み屋でしたが店主が店を畳み、それ以来借り手がつかない状態でした。空き家の入り口の鍵は火事の消火活動の折に壊されており誰でも出入り出来る状態でした」

「誰でも入れるところにわざわざ遺体を置いたってことですか？」

「そう言うことになりますね」


久部の疑問に毛利は同意すると、向島は説明を続ける。


「解体は表の看板でも告知されてましたし、ビル火災のニュースは連日テレビで放送されてました。あえて目立つ場所に置いたのは犯人の自己顕示欲ともとれます」

「被害者の身元は分かりましたか？」


神倉の質問に向島は頷くと被害者の情報が書かれたプリントを出しながら答える。


「はい。ポケットに残っていたレシートからカード番号がわかり、橘芹菜さん２９歳と判明しました」


中堂は被害者の情報が載ったその紙を誰よりも早く手に取ると、また食い入るように読み始めた。
その姿をAは切なそうに見つめる。
向島は被害者女性の情報を続けて話す。


「２ヶ月前に会社を辞めて無職。中野区で一人暮らし。実家は横浜。空き家付近には縁もゆかりもありません」

「被害者の交友関係と現場周辺の目撃情報から捜査する方針です」


毛利のその言葉に、久部は画面を映すと説明する。


「橘芹菜さんの口腔内の写真から口の中にいれられていたものを再現しました。」


画面に映し出された画像は、カラフルな魚の模様がついたボールだった。





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