檸檬の香りに沈む３【アンナチュラル 】

殺人遊戯−04− ページ4

視聴者数908人。


「視聴者数めっちゃ増えてますね」

「まずはご遺体が本物か確かめないと」


ミコトはスマホを耳に当てる。


「Ｓくん、ご遺体をカメラで映して」

「生中継ですよ」


久部が小声で注意する。


「目だけ。目だけ映して、アップで。瞳孔を確認させて。話はそれから」

「《いいですよ》」


白井はカメラを動かす。
中堂もパソコンの画面に近寄った。


「背中が破れてる。１、２、３箇所。紺色に紛れて分からないけど、背中全体が血で染まってるようにも見える」


白井はＹくんをうつ伏せから仰向けに変える。


「硬直が進んでる……死後１２時間以上」


久部は横でパソコンにミコトが言った所見を入力していく。
カメラはアップで目を映す。


「瞳孔が開いてる……角膜が軽度の混濁。瞼を閉じた状態で今の季節なら、死後１５時間から１７時間」


現在時刻は１１時過ぎ。
夕子は時計を確認して言う。


「死亡推定時刻は昨日の夜８時から１０時ってとこか」

「じゃあ、やっぱり……これ」


久部の呟きにミコトは答えた。


「亡くなってる。本物のご遺体」


ミコトはまたスマホを耳に当てる。


「Ｓくん、背中に傷があるみたいだけど、見せてくれる？」

「《見せてもいいけど、ギャラリーがもっと増えないと面白くない。視聴者が増えたら１つずつヒントをあげます。ヒントは全部で４つ》」


白井は指を４本立てて数字を表した。
その時、視聴数は1033人。


「《あっ。1000人超えを記念して第１のヒント。Ｙくんを殺したのはここじゃない。別の場所です。次のヒントは30000人》」

「別の場所……」


通話が切られ、1057人の視聴者数。


「あっ、さっき遺体の足が見えた時」


久部は録画した動画を巻き戻してみせる。


『あっ、これ上履きだよね？』

「そうです」





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