死にたがりの手紙−05− ページ13
その夜、久部はパソコンでミコトの論文について調べていた。
「あった……これか」
【練炭による殺人および自 殺に関する検討】
−浦和市で起きた一家四人無理心中事件−
「自分の事か……」
「おい、心中マニアか」
「うわ!」
背後から聞こえた声は中堂だった。
インスタントラーメン片手に所長室へ入って行く。
「いえ、三澄さんの論文」
「興味はそっちか」
ラーメンをすする中堂に、久部は声をかける。
「これ、一家心中なんですけど……娘ひとりだけ助かるんですよね。どうしてだと思います?」
「探偵の推理は?」
「犯人は母親とされているんですけど、父親が真犯人なんです。命からがら娘だけはと別室へ逃した」
「美談だな」
「ですよね」
「どっちにしろクソ親に殺されかけた。今頃その娘は犯罪者にでもなってるかもな」
「いや、そんな事は……」
「絶望するには十分過ぎる」
そんな暗い話題の時、ラボに明るい声が聞こえてきた。
『あー、中堂さんまたインスタントラーメン食べてる。体に悪いですよ』
「うるせえ。俺が好きな時に好きなもん食って何が悪い」
『じゃあ、これいらないですね?』
Aはお皿に盛ってあるおにぎりを前へ突き出す。
「おにぎり?」
『そう!小腹用におにぎりつくってきたの。久部くんも食べる?』
「え、Aさんの手作り?いいんですか、頂いても」
『どうぞー』
久部はおにぎりを1つ取りとかぶりつく。
「うま!おいしいです!(しかも、Aさんの手作り……)」
『よかった、中堂さんは?』
「食べないとは言っていない」
素直じゃない中堂におにぎりを1つ渡すと、大人しくおにぎりを頬張った。
『今、お茶淹れますね』
にこ、っと笑ったAに、久部はまた思わず見惚れるのだった。
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カハラさん(プロフ) - 中堂先生のお話ないかな〜と探していたところ、こちらに辿りつきました。とても楽しいです!そして胸キュンしてます。ステキなお話を作ってくださってありがとうございます。 (2021年2月23日 8時) (レス) id: 1af5439158 (このIDを非表示/違反報告)
ミヤ(プロフ) - 質問よろしいですか? (2020年12月26日 16時) (レス) id: 7b57897ee4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鞠香 | 作成日時:2018年1月31日 23時