その115【過去編・萩原】 ページ21
工藤優作大先生の講演は実に素晴らしくて、時間があっという間に過ぎていった。
講演会後にはサイン会もあり、ファンたちによる長蛇の列ができていた。
萩「うわ、すごい並んでるね。」
『私、並んでるので萩原さんは煙草でも吸っていてください。萩原さんを一緒に並ばせるわけにはいきませんから。』
萩「いいよ、俺も一緒に並ぶよ。警察官は長時間立つことなんて慣れてるんだから。それにAちゃんを一人にさせたら諸伏に怒られる…」
『私も一人なんて慣れてますよ。大学の授業はぼっちで受けてますから。』
萩「(そういう意味じゃないんだけどな…)そういえば、Aちゃんてどこの大学?」
『…内緒です。』
萩「え!なんで⁉」
『ぎっりぎりで合格したので授業についていくのが大変で、大学の名前を名乗れるほどの成績じゃないので…』
萩「そうなんだ。降谷からAちゃんは高校の時、学年1位だって聞いたからなんか意外だな。」
『鶏口牛後ってやつですよ。でも、今のところ単位は全部取れてるので卒業はできそうです。』
萩「そっか、頑張ってね。応援してるよ。」
『ありがとうございます。無事に卒業できたら教えますね。』
萩「ああ、約束だよ!」
そうこうしているうちに私たちの番が回ってきた。工藤優作大先生からサインをいただけるなんて夢のようだ。
帰り道、車道側をさりげなく歩く萩原さんに今日の講演会の感想を熱く語ってしまった。
『すみません、話しすぎました。やっぱり引きました?』
萩「全然引いてないよ。むしろ俺も工藤優作大先生に興味沸いてきたよ。」
『本当ですか⁉嬉しい!やっぱり萩原さんに来てもらって良かったです!』
萩「ありがとう//降谷の言ってたことは正しかったな…」
『え?』
萩「いや、なんでもない。Aちゃんてブラックホールみたいだなって。」
『ブ、ブラックホール⁉』
よく人を動物に例えることはあるけど、天体に例えるなんて珍しい。それも太陽とかじゃなくてブラックホール…
萩「もちろんいい意味でだよ。」
ブラックホールでいい意味ってどういうこと?マイナスのイメージしかないんだけど。
『今日は本当にありがとうございました。萩原さんとお話できてすごく楽しかったです。』
萩「俺も楽しかったよ。誘ってくれてありがとう。それと約束、絶対だよ。」
萩原さんは小指を出してウインクした。私も小指を出して萩原さんと指きりをした。
まさかこの1年後、あんなことが起こるとも知らずに…
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作者名:おひたし | 作成日時:2019年5月28日 18時