その113【過去編・萩原】 ページ19
《Aside》
今から8年前の秋、私がまだ大学2年生の時に問題が発生した。
私の尊敬する工藤優作大先生の講演会に申込み、見事当選したのだが、一緒に行く予定だったヒロが緊急の招集で来られなくなってしまった。
もう二人分の代金は払ってあるし、今さらキャンセルできない。秀吉や友達はみんな興味なさげでどうしようか悩んでいた。
講演会の3日前、ヒロと電話で話す。会えなくても声が聞けるだけでうれしい。
景光「A、本当にごめんな。一緒に行けなくて…」
『ううん、いいの。仕事のほうが大事だから。』
景「本当にごめん。今度の休みに何か奢るから。」
『いいよそんなの。会えるだけでも充分うれしいから。』
景「それで、講演会どうするの?」
『みんな忙しいし興味ないみたいだから一人で行こうかなって。』
景「実はあいつらに聞いてみたら、松田と萩原がその日非番だって。誘ったらきっと一緒に行ってくれると思うよ。」
『こんなに急だけどいいのかな?』
景「大丈夫だよ。Aのためならあの二人は絶対OKしてくれる。どっちと行くか決めたらまた連絡してくれよ。」
『うん。』
電話を切った。松田さんか萩原さんか…3人で行けたらいいんだけど、空いてる枠は1つ。どちらかに決めないといけない。
いろいろ悩んだ挙げ句、萩原さんに来てもらうことにした。萩原さんにお願いすると、ヒロの言った通り快くOKしてくれた。
「俺でいいの⁉」なんて聞かれたけど、私は萩原さんでいいんじゃなくて、萩原さんがいいんだよ。
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講演会当日の11月7日、待ち合わせ場所に行くと、なんともう萩原さんが来ていた。まだ15分前だよ⁉
『萩原さん、待たせてしまってすみません。』
萩「大丈夫だよ。俺も今来たとこだから。」
『本当ですか?まだ待ち合わせ時間より15分も早いですけど。』
萩「俺、歩くの速いから早めに着いちゃったんだ。(本当は諸伏から、待ち合わせ時間の最低20分前には着いておくようにって言われたんだけどな。Aちゃんは必ず15分前に来るから、それより早く着いておかないとナンパされる恐れがあるってあんなに厳しく言われたからな。)」
『萩原さんと二人でお出かけするの初めてですね。』
萩「そういえばそうだな。本当に俺でよかったの?諸伏から俺と松田しか非番じゃないって聞いたけど。」
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作者名:おひたし | 作成日時:2019年5月28日 18時