『第82話！変える力(6)』 ページ37
……よし、それじゃあ準備だ、手早く済ませよう。
まず、こんな回りくどいことをする私の目的は何か。それは、とりあえず、誰も死なせないことだ。こんなしみったれた場所、ツェペリさんの墓場にはふさわしくない。それに、もっと先の未来で彼が必要になるかも。上手くいけば…だが。
そのために、タルカスの鎧を破壊しちまうのだ、私のとっておきの波紋で。その手順は、こうだ。
ステップ1。奴の鎧と同質、重量も同じ鎧を用意する。…これは完了。
ステップ2。波紋から"波"だけを取り出して、奴の鎧と共鳴する波長を探す。
ステップ3。その波長を覚えたのち、奴に突進、鎧を破壊する。そして…トドメはジョースターさ〜ん♪(仕上げはお母さんのリズム)
タルカスの死角に入り込み、鎧に手を当てる。波紋の波だけに意識を集中させ、鎧と共鳴する音を……はい、みつけた。
都会育ちのおかげか、人混み…それも動きの激しい人混みに慣れた私。難なく戦いの中央…タルカスの懐に潜り込んだ。
『後は頼みますよ…ジョースターさん！』
いくら歴戦の戦士だったとはいえ、やはり300年前の意識は抜け切らなかったのか。私は完全にアウトオブ眼中だったらしいタルカス。
一瞬の隙ができた。その隙のあいだに。
鎧に人差し指を立てた。さっきの波紋を流し込む。鎧が耳障りな音とともに変形していき、ついにその変形に耐えられず──バキンと大きな裂け目ができた。ジョースターさん一人の拳が十分入る大きさだ。
さて、ここでの私の仕事はこれまで。するっと抜けるて、一息つく。
「コオオオオッ！」
背後に聞く、耳馴れた波紋の音。風を切り裂く音。
「あぶない！」
何かに吹っ飛ばされた感覚。またか。一瞬のち、壁にぶつかる感覚。脳が揺れる。飛びそうになる意識、なんとか気合いで踏ん張る。
うめき声が聞こえ、誰かが覆いかぶさってくれたのだと理解した。なんとか顔を動かし、顔を見る。
『…スッピー？』
タルカスの方を見る。もう見るに耐えないほどグチャグチャだ。恐らく、波紋を受けるその一瞬…力を振り絞って、最期の八つ当たりを決行したんだろう。
とっさに飛び込んでくれたんだろう、守ってくれたんだろう。私、必要ないのに。…この、お節介め。
顔は真っ青になった。頭は真っ白になった。
私……誰も脱落させない、と意気込んでいたのになんだ、この体たらくは。なんだ。なんだ。
……息はある。希望はあるか？
『第83話！変える力(7)』→←『第81話！変える力(5)』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 60人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
リリィなモモ(プロフ) - つ、続き！待たずにはいられない！ (3月4日 6時) (
レス) @page43 id: 6ff453207e (このIDを非表示/違反報告)
BOOK&「(.-. )」 - 更新頑張ってくれ！応援してます！ (2020年12月27日 12時) (レス) id: 2cdf88906a (このIDを非表示/違反報告)
さむわん(プロフ) - アリアントさん» ア"ッッ…作者自身が脳内でそう呼んでいた為、完全に失念していました…。出会ったとき、「スッピー」と呼んでいいかと確認していたと、そういう事にして下さい……。ご指摘ありがとうございます。 (2017年12月2日 20時) (レス) id: 1d8895c809 (このIDを非表示/違反報告)
アリアント - そういえば、スピードワゴンさんスッピーって言っても何にも言わないんだね。 (2017年11月12日 20時) (レス) id: e93aa7ac9b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さむわん | 作成日時：2017年6月25日 20時
