【QK】ゆめごこち【短編集】 (ページ10)

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その顔を見ていると、なんだか泣きたい気持ちが止めどなく溢れてきて、思い切り君を抱き寄せた。情けない泣き顔なんてナイスガイのお兄さんには似合わないし、君も同じこと言うでしょ。あ、ほら。

「………寝付くまで、このままでいいかな。」

少し冷たい君の手が俺の髪を撫でる。

「うん、……うん、目が覚めたら、出かけに行こうか。……え？久しぶりにキャッチボール？よし来た。とびきり美味しいお弁当作ってくれるっしょ？楽しみだなぁ……うん、………」

布団の中で足を絡め合う、こんなに冷たかったのか、ちゃんと温めてあげないと。

暫く他愛も無い話をしていると、意識が段々と何処かに引っ張られていくような感覚。あぁ、また夢の中だ。今度はいい夢だと、いいな。

目が覚める。鳴り止まない目覚まし時計の音。

カーテンの隙間、白い光が漏れ出ている。

部屋に充満した白檀の香り、これは君のじゃない、君が、居ない。

あぁ、ダメだった、また"嫌な夢"を見てしまうなんて。

早く目覚めるように、この夢から逃げるように目を瞑る。

次に目を開けたらきっと、幸せな時間が待っているから。

視界の端で笑顔の君が黒い縁の中に切り取られている事には気づかない振りをした。