ymmt『甘えん坊の彼』 ページ1
その日はたまたま午前中ちょっと寄らないといけない用事があっただけで。
そこからオフィスに向かう途中にたまたま興奮した怖そうな犬に追いかけられただけで。
その後たまたま、本当にたまたま確認し忘れた天気のせいで雨に濡れて。
定期が急に見つからなくなる、お気に入りだったストラップが鞄から外れてる、朝彼女に作って置いてもらったお弁当の中身がぐちゃぐちゃ(恐らく犬に追いかけ回された時だろう。)、エトセトラ、エトセトラ……
「っ、……はぁ〜……今日はツイてないなぁ。」
兎に角、その時は愛しの彼女からの癒しを求めていたのである。
彼女の名前はAちゃん。同じオフィスで働く子だ。
実は周りにはまだ付き合っていることは伝えていないのだ。お互い公私混同しないように、と。
そのためオフィス内では苗字で呼び合うことにしている。
そのくらい徹底しているのだから、オフィスで会えたとしてもくっ付いて甘えるなんてことは到底出来ることでは無いだろう。
「お家帰るまで頑張るしかないかぁ……」
オフィスに顔を出すと須貝さんが驚いた顔をしながらも、雨でびしょびしょの僕にタオルを差し出してくれた。
「すんごい濡れてんねぇ〜。どした、傘でも壊れた？」
「いや、ちょっと天気予報確認してなくて…」
「あれま、まぁそういう時もあるよな！とりあえず仕事の前に一休みしたら？」
な！いいよな！と奥の方でパソコンを叩く伊沢さんに確認を取る須貝さん。
すると伊沢さんはパソコンを叩きながらこちらに言う。
「ん、いいよ。この後撮影でしょ？丁度Aさんが撮影部屋で準備してるし、手伝いつつ一休みしてきなよ。」
「…！ありがとうございます…」
Aちゃんが、いる。
「こっちも終わらせたらそっちの部屋行くし、そんなに準備焦らないで良いからねってAさんに言っといて〜……って、もう行ったか。」
「風邪ひかなきゃ良いですけどね、っと。さて、ナイスガイの俺もそろそろ仕事に戻るとするか〜〜！」
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作者名：おらんげ | 作成日時：2021年11月27日 21時
