いくつもの夜を (ページ7)

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第7夜ページ7

行ってきます、と山田の家を出てから迎えに来ていたマネージャーの車に乗った。

「あ、おはよ！」

「おはよ、大ちゃん」

片手でスマホをいじっている大ちゃん。今日のロケは、大ちゃんと知念と一緒だった気がする。

「……伊野ちゃん、今日も？」

「そ。今日もだよ」

唯一、おれと山田の関係を知っている大ちゃん。山田は、大ちゃんが知っていることを知らない。

「体は？平気？大丈夫？」

「へーきへーき、だいじょーぶ」

疑いの視線をこちらに向けてから、大ちゃんは飾り物みたいに持っていたスマホをバッグにしまった。

「そろそろ、やめたら？」

「…なにを？」

「山田と、そーゆーことするの。わざわざ伊野ちゃんが犠牲になることないんじゃない？」

犠牲。
いや、大ちゃんがおれのことを思って言ってくれてるのはわかるんだけど。

所詮、大ちゃんはあの快感を知らない。
『山田はおれのものなんだ』『山田はおれしか頼れないんだ』っていう優越感。

「やめないよ。山田がやめようって言うまで」

おれがそう言い終わると、車が停まって知念が乗ってきた。

「伊野ちゃん、大ちゃん、おはよ」

「おはよ」

「おはよ～」

だからこの話は終わりになったんだけど、なぜだか大ちゃんは少し不機嫌だった。

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