いくつもの夜を (ページ4)

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第4夜ページ4

あの時のおれは、山田に憧れていたんだと思う。自分もそうなりたい、とかじゃなくて、ただ単に憧れていた。

だって、山田はすごく綺麗に輝く。
おれには理解できないぐらいのスピードで、進んでいく。

信じられないくらい、その姿が好きだった。

「伊野尾ちゃん、ちょっと」

「…へぁ？」

山田を見ていたら急に目が合って、変な声が出た。山田が怪訝そうな顔をする。

「あのさ、あの…」

「うん。なに？」

言いづらそうな雰囲気。スマホを置いて、目の前のソファに座っている山田に、きちんと向き直った。

「………弱音、吐いてもいい…？」

恐ろしいほど、山田に似合わない言葉だ。弱音。弱音は、弱い人が吐くもので山田は弱くなんかない。

「だめ。絶対、だめ」

本当は、誰か山田の弱音を聞いてくれる人が必要なのだろう。でも、山田が弱音を吐くところなんて誰も見たくないに決まってる。

「……そう、だよね」

でも、今のでわかった。
山田は不安とかストレスを覆い隠すために必死になっていて、だから不機嫌そうに見えるんだ。自分の中のことでいっぱいで、外から見た自分を気にするほど余裕なんてないんだ。