其の弍 ページ9
「はああああすいませんんんん私より歳上の可能性も十分あると言うのに馴れ馴れしく君付けで呼んでしまいました申し訳ありません潮江様あああ」
土下座で許して貰えるかな…！？牢獄行きとか島流しとか切腹とかなったらどうしよう！？
床と接吻する勢いで平伏していると、フフッと優雅な笑い声が降ってきた。
「文次郎君！良いじゃないか！アハハハ！」
笑っているのは立花仙蔵君…いや、立花様のようだ。
「わ、笑うな！……ハァ、顔を上げろ。こんな事で怒る訳ないだろうが…」
潮江様は顔を真っ赤にしていたが怒りで赤い訳ではないらしい。恥ずかしい…のかな？
「ほ、本当ですか？流刑になりませんか？」
「未来ではこの程度の失態で流刑になると伝わっているのか？」
「いいえ…私の妄想です…」
「妄想でそんな落ち込むなよ！！」
「アハハ、駄目だ未来人と文次郎君の掛け合いが面白過ぎる！どうにかしてくれ文次郎君！プハッ」
「お前が文次郎君と呼ぶな！」
「ふう…笑った笑った。すまない、この学園にはコイツをこんな愛らしい呼び名で呼ぶ者がいないのでな、つい笑ってしまった。文次郎君と呼んで構わないぞ！」
「何でお前が許可するんだよ！」
「では文次郎君では駄目なのか？」
「〜〜〜…別に、構わないが」
「アッハッハッハ！！」
「お前だって仙蔵君だろうが！！」
「仙蔵君は不思議と違和感はないなぁ？面白いのはお前が老け顔だからかな？Aは歳は幾つだ？」
「十六です」
「おや、私達より一つ歳上だったか！ならば気軽に仙蔵と呼び捨てにしてくれ。敬語も無しでな」
「ええと…わかった、仙蔵」
仙蔵は、この場に留三郎がいなくて良かったなぁ文次郎君、なんて言いながら角部屋の戸を力一杯開けた。
「この戸、ちょっと滑りが悪いんだ。留三郎に調整して貰わねばならんな。
さて、この部屋が今日からAの部屋だ」
「わあ…！」
完全木造のレトロな部屋はすぐに気に入った。特に入って左の造り付けの引き出しと押入れのセットは未来の和室では見ない造りだ。
もちろんスイッチもコンセントもなくて新鮮！
「そんな『わあ！』てなるような部屋か？」
「木の温もりが感じられる素敵な部屋だよ！」
「木の温もりって、お前中々クサイ事言う奴だな…」
クサイかな…！？
そうか、この人達は壁紙も鉄骨も使わない和室が普通なんだもんな。感覚をこの時代に寄せていかないと。
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年7月31日 17時
