六年い組の案内の段 ページ8
裏がありそうで怖い。知っている未来の情報全て吐かされて、利用価値がなくなれば消されるのではないだろうか。
「お主のような稀有な存在を見ておるとなぁ…、面白い事をドンドン思いつきそうなんじゃー⭐︎」
だあぁっと声を出してその場の全員がズッコケた。
「ほい、ではAから皆に一言!」
「えっ!?えっと……一刻も早く元の世界に戻る方法を探したいと思います。皆さまには暫くご迷惑をお掛けしますが、どうぞ宜しくお願いします」
あちらこちらから「宜しく」という声と共に拍手が送られた。
歓迎されているの?不法侵入の曲者なのに…。
さっき身ぐるみ剥がされたこと、水に流してやってもいいかな…!
「そんじゃ、あとは立花仙蔵、潮江文次郎、先生方、任せたぞーい!」
学園長先生は二足歩行の犬と一緒にさっさと道場から出て行ってしまわれた。
一応向き直って礼をしておいた。この時代において礼儀はきっと大切だ。
「Aと言ったかな?私は六年い組の立花仙蔵」
「同じく潮江文次郎だ」
老竹色の忍装束の男の子が二人。
一人は立花仙蔵君、紫がかった長いサラサラストレートヘアが美しい。
もう一人は潮江文次郎君、目の下の隈が厳格そうな雰囲気を醸し出している。怒らせたら怖そう。
「宜しくお願い致します」
「まあそんな堅くなるな。部屋まで
外へ出ると日が傾いていた。
「今は夕方ですか?」
「申の刻だな。じきに夕餉の刻限だ」
自信がないけど、申の刻はたぶん15時から17時だ。古典の授業で先生がチラッと求め方を言っていたから。
(…私、今更だけど過去に来たんだよなぁ)
高校に通っていた事は思い出せるのに、友人や家族、親戚の事は何一つ思い出せない。
何だか急に物悲しいような気分になって、こんな知らない土地で、知らない人達の中でやっていけるのか不安になって来た。
「へぷっ」
余所見をしていたらいつの間にか二人が立ち止まっていて、気付かずに文次郎君の背中に顔をぶつけてしまった。
しかも、道案内してもらっているのに空と床しか見ていなかった。
「ご、ごめんなさい文次郎君…」
「も、文次郎君だと…!?」
あ、待って、同年代くらいだなって思ってたから勝手に心の中で君付けしてたけど、実年齢知らない訳だし仲良くもないのだから潮江さんって呼ぶべきだったよね…!?
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年7月31日 17時