其の参(喜八郎視点) ページ4
「質問を変える。何者だ?」
ピリッとした空気が辺りに張り詰める。
返答次第ではこの人の命は幾許もない。しかしこの空気感に当事者は気付いていないらしく、尚もハキハキと返事をする。
「職業ですか?学生です!」
「どこの国の者だ?」
「日本です!」
「馬鹿にしておるのか!?」
「えっ!?そんな滅相もありません!国って…じゃあここはどこなんですか?」
「ここは山城国だ」
「あー!その国ですか。私は伊賀国出身です!でもどうしてそんな事を聞くんですか?」
「伊賀者か…。所持している武器等あれば今出しなさい」
「…へ…?あの、待って下さい、武器って何の事ですか!?私何か疑われているんですか!?」
「出せぬのか?」
「違いますよ!武器なんて持っていません!」
「ならば証明しろ、その脚絆には何も仕込んでおらぬか?」
「キャハンって…?」
安藤先生がご自分の脛をパン、と叩く。
「んん?靴下の事…?」
「早うせぬか」
「は、はい…!」
脚絆と足袋が一緒になったような物を脱いで逆さにしたり丸めたりして何も入っていない事を証明する。
上から縄の繋がれた桶が下ろされ、先生方の指示通りその桶に沓と脚絆が入れられた。
回収された脚絆に興味を示したのは七松先輩だ。
伸縮性のあるそれを伸ばしたり裏返しにしたり、匂いを嗅いでみたりしている。
「こ…これは…!!」
「どうした、小平太!?」
「私、この匂い好きだ!何だか芳しい花のような香りだ!!ほら留三郎も嗅いでみろ!!」
「やめろよ、毒薬が焚き染めてあったらどうすんだよ?」
「次、上衣だ。」
再び桶が下ろされ、曲者?は大人しくそれを脱いで入れた。
五年生の上衣と同じような色合いのそれにも何も入っておらず、先生が後ろへと置いた瞬間、サッと七松先輩がまた奪っていった。
「見ろこれ!上衣に袋が縫い付けてあるぞ!これ手裏剣入れるのに便利だなー!ほらほら、私の手裏剣がぴったり!」
「…小平太お前、この状況楽しんでるだろ?」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年7月31日 17時