天井裏の曲者の段 ページ14
車の走行音や家電の音の聞こえない、とても静かな朝。
最初に目に入ったのが知っている天井じゃなくてテンションが下がりました。ここは戦国時代の忍者の学舎でした。
忍者と共に過ごすって、私のプライバシーはあるのだろうか?昨日は裸も同然の格好にさせられたし。
きっと誰かとの会話を盗み聞きされていたり、天井板を外して暗殺に来たり………
………って!?天井板ずれてるんですけど!?
ずれた板の間から覗く目と視線がかち合った気がするんですけど!!!
布団から飛び起きて、天井に枕を投げつける。
「どうした!?」
すぐに寝巻姿の仙蔵が隣の部屋から駆けつける。
視線を天井に戻すと、既に天井板は元に戻っていた。
「さっき天井板がずれてて…」
直ぐに仙蔵が部屋から出て飛び上がったかと思えば姿が消えた。
あの一瞬で天井裏に上がったというの!?どういう仕組みで天井裏に行けるの!?
「何があった!?」
次いで文次郎君が忍装束を着て駆けつける。慌てて駆けつけたのか、頭巾は付けておらず髪は下ろしたままだ。
説明しようと視線を天井に移すと、それだけで何事かを理解した彼は部屋の中から天井裏を覗き込んだ。
「………既に気配は無い、か」
そこへ仙蔵も戻ってきた。
「見失った」
「先生方に報告するか?」
「いや、恐らく学園内の人間だ。天井裏の構造をよく理解している」
全身が粟立った。
天井裏に潜んでいた人間は、曲者ではなく学園関係者だと言う。この廓の中に少なくとも一人以上、私の存在をよく思わない者がいて、いつでも命を狙える状態にあるという事だ。
人生で初めて命の危険というものを感じたと思う。この時代で今、生きている事が奇跡とさえ思えてくる。
酷い顔をしていたのだろう、文次郎君が大丈夫か、と声を掛ける。
「…そのうち、殺されてしまうのかな。
そりゃそうだよね、こんな不審な現れ方をした未来人だなんて、信用ないよね…」
あまりの恐ろしさに声も出なくて尻窄みになった。
94人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年7月31日 17時