六年生再びの段 ページ11
次は食堂。【食堂】と書かれたしゃもじが看板としてぶら下がっていてちょっと可愛い。
食堂のおばちゃんと呼ばれる人がいて、なんと一人で切り盛りしているんだそう。この時代に大変過ぎる！！
黒板にA定食、B定食、C定食とあり、それぞれ内容が書かれている。ちなみに今日のメインはそれぞれ筑前煮、赤魚の煮付け、肉野菜炒め。
「おばちゃん、仲間が増えました」
「しばらくこちらでお世話になります、Aと申します」
「あらぁ〜、礼儀正しくて可愛い子じゃないの。宜しくねぇ」
癒しッ！！！！
ここは全寮制だとさっき聞いたし、きっとおばちゃんは皆のお母さん代わりとして、愛情こもった料理を振る舞っているんだなぁ。私の母親もこんな感じだったのかな？相変わらず靄がかかったようで思い出せない。
「ついでに食べていこう。A、夕餉は何にする？」
「えっと…赤魚の煮付けにしようかな？」
「私もそうしよう。おばちゃん、B定食を二つ」
「俺はC定食で」
「はいよ、ちょっと待ってね」
お盆に乗せられたのは赤魚の煮付けに白ご飯にお味噌汁、小鉢まである！何これ本当に戦国時代！？飽食すぎん！？
「よう、お前ら」
声が掛かった先のテーブルには、同じく老竹色の忍装束を着た六年生が三人。
「早いな。あれ、長次は？」
「委員会当番だってさ」
自然な流れで一緒に食べようと同じテーブルに盆を置く仙蔵と文次郎君。しかしこの三人のうち二人は先程私の下着姿を凝視した不届者だ。
棒立ちする私の盆を取り上げて文次郎君の隣に置かれたため仕方なく座るが…。
「僕は善法寺伊作。これからよろしくねAちゃん」
「伊作君、よろしくね」
「私は七松小平太だ！よろしく！」
「あ、俺は食満留三郎だ…よろしく頼む」
食満留三郎が真っ赤になった。君、さっきの光景を思い出してるな？
「七松と食満、よろしく」
「えっ何で私達だけ名字呼び捨て！？」
「先程の私への仕打ちを思い出してみやがって下さい」
「何だ、お前が“今見たものは忘れろ”って言ったんじゃないか！なあ留三郎？」
ゔっ。確かに言ったが。水に流すとも決めたが。それにしたって少しくらいは申し訳なさそうにしてもいいんじゃないかな？私は恥ずかしかったんだぞ。先生ですら「相すまぬ」って謝ってたぞ。
「すまん、その話は俺には振るな…」
これに反応したのは仙蔵だ。ほんの一瞬、真顔になったのを私は見逃さなかった。
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年7月31日 17時
