其の肆 ページ48
「竹谷と喧嘩したのか」
自室の扉に手を掛けた時、長次さんが私を呼び止めた。
「あれ？そんな風に見えた？」
「違ったらすまない。落ち込んでいるように見えた」
普段寡黙な長次さんが声を掛けてくるくらいだから相当顔に出てたのかな。気を付けないとなぁ。
「ううん、違わないよ。考え方の違いでちょっとした言い合いみたいになっちゃって、解散してきたところ」
「そうか」
一方的に話を終わらせてしまったけど、あのまま話してたらきっと涙が溢れて八左ヱ門が言いたいこと言えずに我慢してしまうだろうから、きっとこれが私に取れる最善手だったと思う。
「明日放課後に図書委員会主催の会合で忍たまとAを招集する。仲直りは早い目に……」
図書委員会主催の会合って何するんだろう。虫食い文書の解読会とか？ちょっと楽しそう……いやそんな訳ないか。とにかく放課後は八左ヱ門とは話す時間はあまり取れないってことだ。
「そうなんだ。明日昼休みくらいに八左ヱ門が暇そうだったら話しかけてみようかな」
「それがいい」
「…ねえ、長次さん。私、今日一人で町に行ってさっき帰ってきたところなんだけど、私の一人での町歩きは早過ぎると思う？」
痴話喧嘩の内容を聞かせるのは忍びないけど、第三者の意見も聞いてみたい。
「……いや。この時代に留まるなら遅かれ早かれ経験せねばならないだろう。それに早いから悪い、遅ければいいという問題ではない。
それを竹谷が怒っているのか」
「うーん、すごく心配を掛けたみたいで、まだ早かったのかなと思って」
「竹谷はお前を護ると強く決意しているのだろう。これからたくさん頼られたいのに早く自立しようとするお前に戸惑っているのかもしれない」
「八左ヱ門、いつも委員会でも頼られて大変そうだけど、同時に嬉しそうだからそうかもしれない…！」
さすが図書委員会委員長。他人の心情を理解するのが得意でいらっしゃる…！
「男は単純な生き物だ。迷惑など気にせずもっと頼ってやるといい」
「ありがとう、仲直り出来るような気がしてきたよ」
もちろん、私の気持ちを理解しないまま頭ごなしに否定されたことは嫌だったけれど、長次さんの“男は単純”の言葉がスッと入ってきた。
単純。一辺倒。私の安全最優先。八左ヱ門はずっと前からぶれていないんだ。
(明日、きちんと私から謝ろう)
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玉虫厨子(プロフ) - 雪見だいふくさん» わ〜ありがとうございます💓今はペースゆっくりですが更新頑張ります！！ (2月4日 16時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
雪見だいふく - この作品めっちゃ好きです〜更新大変だと思うけど、頑張ってください！！！！ (2月4日 11時) (レス) id: ebcac87da6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年12月29日 15時
