其の参 ページ7
「縁談について私が勝手に親方達に説明していますけど、友達からという事で大丈夫ですか?」
「はい、その設定で大丈夫です!」
「いや、設定とかではなく、実際に友達からで…という訳にはいきませんか?」
「しかし、清八さんに縁談を受ける気は無いのでは?」
「『断って下さい』と言ったのは、Aさんの気持ちを尊重したい一心でした。そこに私の気持ちはありません。
Aさんから『断ります』と聞いた時、私は胸が痛みました。おかしいですよね、自分で断る事を勧めておいて。そこで初めて自分の気持ちは『断らないで欲しい』だったことに気がついたんです」
「……それでも私は…」
「未来から来たから受けられない、ですか?」
「ちょっと待ってよ!どうしてAさんが未来人であることを清八が知ってるの!?」
「コレステロールとの会話で。忍者の男も言ってました」
「…そうです。いつ消えていなくなるか分からないので、無責任な事は言いたくないんです」
「無責任じゃありませんよ。“お友達”なんですから。未来へ帰ろうが友達であることには変わりありません」
「…分かりました!では清八さんは友達三号です!」
「ええ?Aさんは友達もっといるでしょう?」
「まあね。友達だと明言した人を数えているだけだよ」
「と言うかその一号と二号って…」
「一号が守一郎で、二号が八左ヱ門だよ」
「ん?一号は潮江文次郎会計委員長じゃないんですか?」
「違うけど?」
「潮江委員長が『Aの友達一号は俺だ』って言い張ってましたけど…」
なんでも、初日に私が「文次郎君」と呼んだことに対し、「一番初めに親しくなった」からだと言う。
「へー。別に言い張るようなことでもないけど、文次郎君が私の事を友達って思ってくれてるのは結構嬉しいなぁ!」
ふと動かした手の先に脱ぎ散らかした服が落ちていたので、畳みながら話をした。
「あ、畳ませてすみませんっ!」
「いえいえ。傷のお詫びにこれくらいお手伝いさせて下さい」
「助かります!」
「事情を知る人間が増えるのは危険だけど、知られた相手が清八で良かったと思うよ。Aさん、おれは先に戻ります」
「うん。分かったよ」
「若旦那、お疲れ様です」
その後、気を利かせた団蔵君のお母上が夕餉を二人分届けて下さったので、清八さんと談笑しながら頂いた。
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時