其の肆 ページ47
「この乱世、自分優先になりがちだからな。だが私はAのその感覚、好きだよ」
不意に微笑まれ、頭を撫でられた。
今日は仙蔵との距離が近くて反応に困ります。
「じゃあ明日、忘れるなよ」
爽やかな笑顔を残して仙蔵は去っていった。
何だか無性に忍たまと話がしたくなった私は学園内を散歩することにした。もう何人か帰って来ているみたいだから、運が良ければ暇している忍たまと話せるかもしれない。
「Aさ〜〜〜んっ！！」
そこで今し方学園に到着したらしい三木が走ってくる。
「お久しぶりです！お変わりありませんでしたか！？」
「久しぶり！変わったことはたくさんあったけど身体はピンピンしてるよ」
「変わったこと？ま、でも息災でいらっしゃるなら何より！この田村三木ヱ門、Aさんのことが心配で、つい早めに帰って来てしまいました！」
「そうだったの？ごめんね、ありがとう…！」
三木は突然はっと何かに気付いたようで私の両肩を掴むと、「すみません、失礼します！」と言って私の首筋にぐっと鼻先を近付けてすんすんと匂いを嗅ぎだした。
「っへ！？ちょっと三木！？」
側から見たらとんでもない光景である。やめさせようと胸を押し返すと、すぐに距離を取ってくれた。
「ああっすみません、Aさんから硝煙の匂いがしたような気がしてつい…」
「……ああ！これかな？照星さんから頂いた扇子」
「しっししししょしょ照星さんからっ！？！？」
動揺が凄まじい。やはりそれほど尊敬してやまない人なのだ。開いて渡してやると恐る恐るそれを嗅いだ。
「ああっ！？確かに硝煙臭の中にどことなく照星さんがいらっしゃるような！？飾りっ気のない男物の扇子はまるで照星さん自身を体現しているかのよう…そう！まさに照星さんの
瞑目しながら扇子に挨拶する三木、変だけど可愛い。
何だか急に賑やかな日常が戻ってきたようで嬉しいなぁ。
「ありがとうございました、お返しします……、どうして笑っているんですか？」
「いやぁ、さっきも仙蔵と話したんだけど、忍術学園で忍たまに会って本当に懐かしくって。ほっとしたら笑えて……あれ、涙が…」
急に何かの涙が溢れてきたので慌てて手拭いで目元を押さえる。
「わ〜何だろ、ちょっと止まらないや。ごめんね、こんな所人に見られたら誤解されるよね。ちょっと部屋に戻るね…」
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年10月11日 16時
