其の参 ページ43
「昌義様、照星さん、虎若君。本当にお世話になりました!」
「達者でな。道中気を付けろよ」
「学園で会いましょう〜!」
「それでは失礼します。 ハッ!」
清八さんの掛け声と共に馬が駈け出す。清八さんの肩越しに見える佐武村がどんどん小さくなってゆく。
夏休みが終わるんだ。昌義様や照星さんと別れるのは寂しいけれど、とうとう忍術学園の皆に会えるんだ!
「──Aさん、こっち向いて下さい」
「え?」
振り向くと、不機嫌顔を隠そうともしない清八さんと目が合う。
「やっぱり、嬉しそうな顔をされて。そんなに照星さんの頭巾を脱いだ姿がお好きなんですか?」
ああ、これは嫉妬かな…?照星さんに助けて頂いたのを“負けた”と表現していたし、彼なりに思うところがあるのだろう。
「もうすぐ忍たま達に会えるから嬉しいなって思ってただけですよ。本当です」
「では忍たまの中に意中の人が?」
「いません!!」
「そうですか、それなら良かった」
どんな顔して呟いているのか、そんな声がボソリと聞こえた。
今日は爽やかに晴れている。
晩夏と言えど、まだまだ汗ばむ時期。道中で団蔵君のお母上の絶品梅干し入りおにぎりを食べ、水分をしっかり摂って忍術学園へ向かう。すると一刻半ほどで忍術学園に到着した。
「も、もう忍術学園に着いた…!」
「堺の方面を通って来たので。あの辺は往来が多くて、都に繋がる良い道が整備されているんです」
「へえ…それにしたって何事もなく無事に着くなんて!」
「あはは、それが普通ですけどね。Aさんは襲われ過ぎなんですよ」
白南風丸さんの天然石の首飾りと、照星さんの扇子のご利益かな?
私達が正門の前で話していると、小さな潜り戸から小松田さんが顔を出した。
「あ、Aさん!清八さんも、お久しぶりです〜!」
「お久しぶりです!」
「ご無沙汰してます、小松田さん」
「今、こっちの大きい方を開けますね〜」
馬が入れるように、門を片側開けてもらった。私達が入ると小松田さんはもう一度それを閉めた。
「一旦閉めさせて頂きますね。お帰りの際にまた開けさせて頂きますのでおっしゃって下さいね」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時