いざ、忍術学園への段 ページ41
「Aさーん!清八さんがご到着ですよ!」
「ほんと?今行く!」
「行李持ちますよ」
「いいの?重たくない?」
「これくらいどうってことありません!鍛えてますからっ!」
「そうだね。ありがとう、虎若君」
あれだけ居心地悪く感じていた佐武村は、今では離れ難く感じるほど愛着がわいた。
照星さんは表裏がなくなって、もう小姓の真似事はしなくていいと言われたが、私が自主的に続けたのでずっと一緒だった。
私は最初の頃から強引な照星さんばかり見てきたけれど、元来彼はとても穏やかな人で、思いやりに満ちていた。もっと早く自分の気持ちをガツンとぶつけていれば、あんなに落ち込まなくて済んだかもしれない。
(でも八左ヱ門に会えたのは嬉しかったな。兵助も兵庫水軍まで来てくれて…皆優しいな)
忍術学園に戻ればまた忍たま達と笑い合う日常が待っている。久しぶりに皆に会えるの、楽しみだなぁ…!!
「Aさーんっ!」
「清八さーん!」
もうその場には清八さんと昌義様、照星さんがいらしていた。
「A!!またお前はそんな短い小袖なんぞ着おって!女子なのだから馬上で横乗りくらい出来るようにならんか!」
昌義様が怒っていらっしゃるのは、私がびしょ濡れで帰って来たのを見られていて、婚前の娘が破廉恥な格好するな!と説教を受けたため。確かに濡れた馬借スタイル小袖はピッタピタに肌に張り付いて、私の体型をもろに晒す事になり恥ずかしかった。
「スミマセン…」
「あはは。次に私がお会いした時に特訓しておきますね」
清八さんがさらりと言う。えー。私横向きで乗るの、後ろへひっくり返りそうな気がして怖いんだけどな………ん?
いいこと思いついた!!
「昌義様、袴を履いて乗れば問題ないですよね!?」
「ああ…確かにそれなら」
「よし!学園のお手伝いでお小遣いを貯めて袴を仕立てて貰います!万事解決!
乗馬の時だけでなく普段だって小袖より動きやすいし!はぁ〜どうして今まで気付かなかったんだろう!?」
「私天才!」と自画自賛していると、清八さんは困ったように頬を掻いた。
「でも私は小袖を着た可愛らしいAさんを横座りで乗せるのが夢ですけどね〜」
「夢って…。横向きに座るの怖いんです、勘弁して下さい」
「でしたら、私に抱きつけば大丈夫ですよ」
「だっ…!?ちょっと清八さん!虎若君もいるんですからそう言うこと言わないで下さいっ!!」
「あはは、すみません」
58人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時