検索窓
今日:38 hit、昨日:60 hit、合計:18,580 hit

其の弍(照星視点) ページ33

翌日。どんよりとした雲が垂れ込めて、連日の焼き付けるような日差しは和らいだが、蒸し蒸しする日となった。


「Aさんの食欲が戻って良かった!」


「心配かけさせおって…」


「昌義様、申し訳ありません。ご心配をお掛けしました」


「うむ。良くなったのであればよい」


「昌義殿。本日はAと佐武村の外へ出る予定なのだが、お許し頂けるか?」


「ふむ。よい気分転換にもなろう。外の空気を吸ってくるといい」


いつも丈が長く品の良い小袖を好んで着ている印象だったが、今日は袖無しの裾が短い小袖を着て厩へ来た。
そう言えば初日も同じ服装だった。


「横向きに乗れないんです、悪いですか?」


私の視線から何か感じ取ったのか、こちらが何か言うより先に怒ったように話す。
だから乗馬時は馬借と同じく短い丈の小袖でないといけないのか。立付(たっつけ)袴などは女はあまり着用しないからな。


「そう怒るな、何も言ってないだろう」


Aを前に乗せて山道を駈ける。
渓流を上流へと向かうと、小さめの滝へ辿り着く。ここは夏でも涼しく、私の気に入りの避暑地である。
我々が降りると、愛馬は冷えた水をゆったりと飲み始めた。


「さて。此処は滝の飛沫が飛来する為、火薬を扱う佐武衆が好んで立ち寄る場所ではない。喉が渇けば水も豊富にある。存分に話が出来るぞ」


座るのに適当な大きめの岩がごろごろと転がる岩場で、それぞれ別の岩へと腰を下ろす。


「照星さん。あなたは私をどうしたいですか?殺したいですか?」


「別に殺したいなどとは思っていない。ただ監視・牽制の対象としてお前を見ているに過ぎない」


「度が過ぎると思いませんか」


「全く。幽閉されぬだけましだと思うが。今日は私の言動に対する文句か?」


「そうですね。改めて頂きたく」


「無理な相談だ。お前が未来人などと法螺吹いているうちはな」


「何度も言いますけど、嘘じゃありません」


「若太夫にもお前の事を訊ねてみたが時間移動の原因、手段、頻度全てにおいて不確定要素が多過ぎる。どのようにして信じろと言うのだ?
これを偽りだとするのは極めて合理的な判断だと思うがね」


Aは俯き、膝の上でぎゅっと拳を作る。その瞳には涙が溜まっている。返す言葉を必死に探しているようだ。

其の参→←けりをつけるの段(照星視点)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (41 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
58人がお気に入り
設定タグ:忍たま , 照星 , 清八   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。