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◆
こうしてAを付き従わせる生活が始まった。
周囲には、【私がAを気に入ったために小姓の真似事をさせている】と解釈されたようだ。そして私もこれを利用し、二人きりでない時はそのように振る舞った。
移動する際に黒色火薬の甕を持たせたり、射撃訓練の間、後方でひたすら待機させた。
事あるごとに言葉と態度で牽制したからか、Aは文句なども言わず、大人しく私の指示に従った。
Aと離れるのは厠、風呂、そして就寝時。
就寝時に監視を緩めたのは、あえて行動しやすくさせ、疑わしき行動をとった時に仕留めてやろうと思ったからだ。
だが、一度部屋に入ると夜明けまで一度も出ない。私を警戒しているのかもしれない。
◆
常に疑いの目を向け続けること三日。Aに変化が現れた。
「口に合わんか?」
「いいえ…!そんな事は無いのですが、どうも暑さのせいで食欲がなくて」
「ええ…、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、虎若君」
食事をあまり摂らなくなった。その翌日には口数が減り、そのまた翌日には笑わなくなった。
「A、様子がおかしいぞ。何かあったのか?」
「いえ…」
「一度診てもらうべきだ。虎、朝餉を食べ終えたら町へ薬師を呼びに行け」
「うん、分かった…!」
「やめて下さい、ただ暑さにやられただけです」
「そうでない可能性もあるだろう。照星殿、今日はAを寝かせておく事。よいな?」
「ええ。A、連日私に付き従わせて疲れさせてしまって申し訳ない。今日は一日ゆっくりしなさい」
「………、はい」
Aは私の態度の変化に反感を覚えたのか、密かに唇を引き結んだ。
其の伍(照星視点) ページ26
Aの部屋へと移動すると、行李をずい、と乱暴に突き出した。勝手にしろと言わんばかりの態度だ。
それでいい。怒車の術に掛かってくれればこちらも粗を探し易い。
行李の中はほとんどが衣類。忍がよく使う武器や用具らしき物はない。
「これでお分かり頂けました?私がくノ一だなんて全くの誤解です!そもそも山賊にも勝てない忍なんて、大した仕事はできないでしょう!」
「諜報活動に必ずしも武術は必要ではない。忍である証拠を見つけられなかっただけで、忍であることを否定する根拠にはならない」
そう言うとAは深い溜息をついた。私からの追及に辟易としているようだ。
「じゃあ、私をどうしますか?」
「逗留中は常に私の側に置き、監視する」
こうしてAを付き従わせる生活が始まった。
周囲には、【私がAを気に入ったために小姓の真似事をさせている】と解釈されたようだ。そして私もこれを利用し、二人きりでない時はそのように振る舞った。
移動する際に黒色火薬の甕を持たせたり、射撃訓練の間、後方でひたすら待機させた。
事あるごとに言葉と態度で牽制したからか、Aは文句なども言わず、大人しく私の指示に従った。
Aと離れるのは厠、風呂、そして就寝時。
就寝時に監視を緩めたのは、あえて行動しやすくさせ、疑わしき行動をとった時に仕留めてやろうと思ったからだ。
だが、一度部屋に入ると夜明けまで一度も出ない。私を警戒しているのかもしれない。
常に疑いの目を向け続けること三日。Aに変化が現れた。
「口に合わんか?」
「いいえ…!そんな事は無いのですが、どうも暑さのせいで食欲がなくて」
「ええ…、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、虎若君」
食事をあまり摂らなくなった。その翌日には口数が減り、そのまた翌日には笑わなくなった。
「A、様子がおかしいぞ。何かあったのか?」
「いえ…」
「一度診てもらうべきだ。虎、朝餉を食べ終えたら町へ薬師を呼びに行け」
「うん、分かった…!」
「やめて下さい、ただ暑さにやられただけです」
「そうでない可能性もあるだろう。照星殿、今日はAを寝かせておく事。よいな?」
「ええ。A、連日私に付き従わせて疲れさせてしまって申し訳ない。今日は一日ゆっくりしなさい」
「………、はい」
Aは私の態度の変化に反感を覚えたのか、密かに唇を引き結んだ。
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時