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其の伍(照星視点) ページ26

Aの部屋へと移動すると、行李をずい、と乱暴に突き出した。勝手にしろと言わんばかりの態度だ。
それでいい。怒車の術に掛かってくれればこちらも粗を探し易い。

行李の中はほとんどが衣類。忍がよく使う武器や用具らしき物はない。


「これでお分かり頂けました?私がくノ一だなんて全くの誤解です!そもそも山賊にも勝てない忍なんて、大した仕事はできないでしょう!」


「諜報活動に必ずしも武術は必要ではない。忍である証拠を見つけられなかっただけで、忍であることを否定する根拠にはならない」


そう言うとAは深い溜息をついた。私からの追及に辟易としているようだ。


「じゃあ、私をどうしますか?」


「逗留中は常に私の側に置き、監視する」









こうしてAを付き従わせる生活が始まった。

周囲には、【私がAを気に入ったために小姓の真似事をさせている】と解釈されたようだ。そして私もこれを利用し、二人きりでない時はそのように振る舞った。

移動する際に黒色火薬の甕を持たせたり、射撃訓練の間、後方でひたすら待機させた。
事あるごとに言葉と態度で牽制したからか、Aは文句なども言わず、大人しく私の指示に従った。

Aと離れるのは厠、風呂、そして就寝時。
就寝時に監視を緩めたのは、あえて行動しやすくさせ、疑わしき行動をとった時に仕留めてやろうと思ったからだ。

だが、一度部屋に入ると夜明けまで一度も出ない。私を警戒しているのかもしれない。










常に疑いの目を向け続けること三日。Aに変化が現れた。


「口に合わんか?」


「いいえ…!そんな事は無いのですが、どうも暑さのせいで食欲がなくて」


「ええ…、大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ、虎若君」


食事をあまり摂らなくなった。その翌日には口数が減り、そのまた翌日には笑わなくなった。


「A、様子がおかしいぞ。何かあったのか?」


「いえ…」


「一度診てもらうべきだ。虎、朝餉を食べ終えたら町へ薬師を呼びに行け」


「うん、分かった…!」


「やめて下さい、ただ暑さにやられただけです」


「そうでない可能性もあるだろう。照星殿、今日はAを寝かせておく事。よいな?」


「ええ。A、連日私に付き従わせて疲れさせてしまって申し訳ない。今日は一日ゆっくりしなさい」


「………、はい」


Aは私の態度の変化に反感を覚えたのか、密かに唇を引き結んだ。

関わったら最後までの段(虎若視点)→←其の肆



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設定タグ:忍たま , 照星 , 清八   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時

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