其の肆 ページ25
「未来から来たなどと荒唐無稽な事を…。忍術学園の者は何人籠絡した?」
照星さんの低い声がすぐ近くで聞こえる。
「…籠絡だなんて…私は…!」
いや、それよりもなぜ私が未来人だと知られているの?虎若君が話してしまった?
「私は客分とはいえ佐武衆の一員。この村に手を出すなら容赦しないぞ…」
そうだ。それが普通だ。突然『未来から来ました』と聞かされてすんなり信じる人の方が圧倒的に少ないだろう。
ましてここは『味方にすればその戦は必ず勝てる』とまで言わしめる傭兵集団の中枢。本来なら私のような部外者が入っていい場所ではないのだ。それが許されているのは、
照星さんの指がゆっくり滑って私の頸動脈を探し当てた。私が何か一つでも言葉を間違えば、即座に喉が絞め上げられるだろう。
落ち着け、私。何も悪い事をしていないじゃないか。
「私が未来人であること、学園は箝口令を敷いていました。どうして知っているのですか?」
「先に私の質問に答えろ。何が目的だ?兵庫水軍も佐武衆も中規模の軍事拠点。馬借は違和感なく各地を転々とできるから情報収集するにはもってこいだな」
「目的などありません。夏休みの逗留先は学園長先生が各所に打診し、その決定は虎若君達と一緒に聞きました」
「しらを切るか」
頸への圧が僅かに強められた。
「ンッ……事実を言ったってそうやって頭ごなしに否定するのなら、私はもう何も答えませんから…!」
照星さんは目を細めて私の腕を掴み上げ、手甲を外した。
「手首に暗器は無し。ならば懐か」
襟に手を掛けたので思わず照星さんの手首を掴んで止めた。
「抵抗するという事は、ここに何か隠し持っているという事だな」
「異性に服を脱がされそうになったら普通は抵抗するでしょう!?」
「安心しろ、私にくノ一を襲う趣味など無い」
「くノ一じゃありません!!」
私の手を振り払うと、襟は無遠慮に左右に開かれた。
両手首を纏め上げ、暫く私の身体を検分すると、すっと私の上から退いた。
「村へ持ち込んだ二つの行李の中も見せなさい」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時