其の弍 ページ21
「ちょ、ちょっと待って下さい、私の頭の中を整理させて下さい!」
「縁談を『私も断るつもりです』と言われた時、胸が締め付けられるようだった。思えばあの時感じた胸の痛みは、気持ちの奥底ではあなたを欲しているのに、言葉で突き放してしまったという気持ちと言動の
一度話し始めたら止まらなくなってしまったのか、どんどん話す清八さん。
「しかしそれもこの山賊の件で何もかも終わった…。弱者と一緒になろうとする女子など存在する筈もないし……」
「私、清八さんは弱いとは思いませんよ」
「気休めはよして下さい。私はあの瞬間、山賊と照星さんに負けたのです」
「その理論でいくと、清八さんは雑渡昆奈門に勝ったことになります。機転を利かせて見事に退けたのですから」
ぴく、と僅かに指先が反応したのを私は見逃さなかった。
「それに、手を離さなければ殺されてしまうのに、私の手を決して離しませんでした。とても勇敢で、清八さんだから出来たことです。
たとえ、それが事態の解決に結び付かなかったとしても、私は嬉しかったですよ」
「Aさん…。
若旦那から聞いたんです、Aさんと忍たまとの出会いや、皆さんにどう受け入れられていったかなど。でも私はどうだっていいんです。Aさんが何者でも構いません。
もし、私を好きになってくれたら、未来人だからなどと言わずに、私との関係を進めてくれませんか?」
未来人だと聞いてこれほど態度が変わらなかったのは、清八さんにとってそこは重要ではなかったからなんだ。
それにしても気にしなさ過ぎではあると思うけど。
「私が清八さんを好きになったら、恋仲になりましょう」
「本当ですか!!ありがとうございます!Aさんの隣を歩くに相応しい男になれるよう精進します!」
本当に嬉しそうに、満面の笑みで、膝に手を添えて潔く頭を下げた。
ああ、やっぱり私には勿体無いくらいの素敵な男性だ。
明日離れるのが少し寂しくて、衝立の向こうで布団を彼に近付けて寝たのは内緒だ。
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年10月11日 16時