初めての乗馬の段 ページ10
出立の朝、団蔵君が片手で抱えられるくらいの籠を持って私の部屋を訪れた。
「Aさん、おはようございます!」
「おはよう、団蔵君。それ何?」
「
行李とは、竹などで編まれた蓋つきの籠で、旅の荷物入れになるらしい。田舎のおばあちゃん家にも普通にありそう。
「貸してくれるの?ありがとう!」
風呂敷の中身を詰め替える。と言っても小袖と下着、手拭い、櫛くらいしかないけれど。
正門で清八さんの到着を待つ。団蔵君は、清八さんが到着するまで一緒に待っていてくれるらしい。
「そう言えば、Aさんって字がお上手なんですよね」
「いやあ、それほどでもないけど。もしかして文次郎が言ってた?」
「はい。委員会で僕の書いた帳簿が、字が汚過ぎて読めないって怒られたんです。Aさんの爪の垢を煎じて飲めって。
なので爪の垢をくれませんか?」
「エッ!?本気?それは嫌かな…!!」
「そうですか…」
しゅんと落ち込む下級生を見て私の良心が痛んだ。爪の垢は悪魔の実じゃないんだから、能力は習得出来んのよ…
「それじゃあ、私が加藤村に着いたら一緒に字のお稽古する?」
「わー!いいんですか!?ありがとうございます!!」
「若旦那ー、Aさーん」
「あ、清八ー!」
そうこう言っているうちに清八さんが到着された。
「今日は素敵な小袖なんですね」
私の抱えていた行李を受け取りながら言う。以前は四年生の忍装束だったもんなぁ。コレステロール号に頭巾食まれたっけ。
「戦じゃあるまいし、いくらなんでも昼間に忍装束で闊歩するのはおかしいよ」
「はは。そうですね」
今日の馬はコレステロール号ではないみたい。栗毛に少し淡い茶色のぶちだ。
「重たいけど、よろしくね」
その馬は尻尾を大きく揺らして大人しく撫でられた。
「横向きに乗れますか?」
横向きって…そうか、この小袖だと跨ることができないから。
「Aさん、おみ足失礼しますね」
清八さんは私の前でしゃがむと、膝のあたりに抱きついて、ぐんと持ち上げた。
「ひゃ…!」
一瞬で私の臀部は鞍の上に着地した。私を軽々持ち上げるなんて、馬借の人は力持ちだなぁ。
「どうですか?怖くないですか?」
「結構目線が高いんですね…!」
66人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時