其の参(重視点) ページ43
「もう無理っ!!!」
衝撃的な場面を見てしまった。
洗濯場に行くとAが義丸の兄貴の頬を思い切り打った瞬間だったのだ。
「いやぁ、派手にやられちゃったなァ」
「どうしたんですか!?」
訳を聞かずとも大体の想像はできてしまうが、その後のAの様子がおかしい。
「も、申し訳ありません!」
青ざめて数歩後退り、土下座をしたので俺達三人はぎょっとした。
「いや、あれは完全に俺が悪いし、女から叩かれるなんて時々あることだし…顔を上げてくれ、な?じゃないと俺が兄貴達に怒られちまう」
恐らく義兄の言葉通りAは悪くないと思うので、俺と網問が背中や肩に手を添えて顔を上げるよう促す。すると砂の上に滴がぽたりと落ちたのが見えた。
「え!?」
◆
Aは泣いていた。
事情を訊ねれば、時々言葉に詰まりながらも、朝から色々な事があって気持ちが混乱してしまった事、俺達に世話になっている身で義丸の兄貴に羞恥のあまり手を上げてしまった事、それにより追い出されたり海に沈められたりするのではと怖くなった事を話してくれた。
「海に沈めるって…!俺達がそんな事する訳ないだろ!?」
「そうだよ、仲間なのにさぁ!」
「それより、朝から色々あったって一体何があったんだよ?」
「網問に耳を舐められて、事故でお風呂で舳丸さんと鉢合わせて、その後網問に肩を噛まれて、義丸さんに腕を噛まれて舐められて…」
「はあ!?お前何してんの!?」
網問をキッと睨めば、しゅんと小さくなって謝罪した。
「う…本当ごめん…」
「義丸の兄貴も!Aに手ェ出さないでって言ったでしょう!?」
「面目ない…」
義丸の兄貴はかなり反省しているようで、俺からの叱責を正座で受けている。
「Aも、引っ叩いたくらいで海に沈めるとかないから!もちろん追い出したりしない!どんどん制裁加えてやるくらいで丁度いいからな!」
「はい…」
「ついでに網問の事も叩いとけ!」
「うん!禊として一発叩いて!」
網問も受ける気で正座をして目を閉じた。
「うん…それじゃあ」
頬ではなく、後頭部を思い切り前方へ押した。横から張り倒されるつもりでいた網問は思いがけない方向からの押しに耐えられず、顔から砂に突っ込んだ。
「ひでぶっ!」
砂から顔を出した網問の顔を見て、Aは吹き出した。
「プッ…あはは!砂まみれ!」
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時