【忍たま】君の想いは花筏【共通話６】

舳丸の優しさの段 ページ38

白南風丸さんがお風呂の火の後始末をしに行ってしまい、舳丸さんと二人きりになった。


「……………」


「……………」


沈黙。結構静かな人なのかな。それにずっと表情が変わらない…。
白南風丸さんがいなくなった途端、空気感がしんどいな。そりゃそうか、さっき私この人の求婚断った訳だし。

裸を見てしまったし見せてしまったから結婚しましょうって事だよね？それはさすがに行き過ぎだよね？

海賊さんってこんなことがあっても「お、風呂入ってたのか！悪い悪い！減るもんじゃなし許せ！ガッハッハー」みたいな、豪快な小平太のようなイメージなんだけど、舳丸さんは繊細な人なのかも？

私も見られた瞬間は恥ずかしくて死にそうって思ったけど、舳丸さんの求婚で羞恥心は吹っ飛んでしまった。


「何だか難しい顔をされていますけど、今、何を考えていますか？」


「エッ」


顔に出てたかぁ。舳丸さんぶっ飛んでるなーと思って、なんて言えないし…


「ええと、昨日のご飯、美味しかったなぁと…」


うーん。難しい顔して考えることじゃないよなぁ。無理があったかな？


「蛸と鯛ですか？」


「あれ、私が食べたもの知ってるんですか？」


「はい。席から見ていたので…。あの鯛は私が獲って来たんです」


そういえば、昨日義丸さんが船から釣って、誰かが銛で突いたって言ってた。その時聞いたのが知らない人の名前だったから忘れちゃったけど、舳丸さんだったか。


「鯛、とっても美味しかったです！」


「それは良かったです。さっきも朝食用にと狙って来たんです。チヌしか獲れませんでしたが」


「チヌ？どんな魚なんですか？」


「東の方では黒鯛って呼ばれています。味が落ちるのが早くて町では好まれない魚です。素早く〆たのでそこまで味は悪くないと思いますが…すみません」


「えっ、どうして謝るんですか！？」


「〆てすぐの真鯛の刺身が好きと聞いたので…」


「私のために朝から潜って下さってたんですか！？」


「はい」


な、なんて優しい人なんだ…！
ぶっ飛んだ人とか思って申し訳ないです！！


「わざわざありがとうございます…！そのお気持ちだけで凄く嬉しいです！」


「惚れましたか？」


「惚っ！？ええっと…ほんの少し、惚れかけましたかね…」


「なるほど、分かりました。もっと精進します」

其の弍→←其の参（白南風丸視点）

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す