其の伍 ページ28
「そう言えば、昼間は間切さんが海水を浴びて陸酔いから回復されていたようですけど…」
「ええ、海を感じると少しは楽になるんです」
三者とも“海水は効く”と。
海水で症状が良くなるってなんだ。陸に生きる生物が陸酔いって何なんだ。いや、もう考えるのはよそう。
「だったら、海水を汲んできますね」
桶のような平たい入れ物に海水を汲んで運ぶのは結構重労働だった。歩く度にたぷたぷと波打ってちょっと小袖にかかってしまったし。
ここで私、疾風さんが『休め』と言った理由を知る。身体を動かすと一気に酔いが回った感があったのだ。
「海水…！ありがとうございます！」
私が桶を皆さんの前に置くと、各々が一つの桶から海水をじゃぶじゃぶと浴びる。そうすると少しはすっきりしたらしい。
「うぅ……」
水を得た魚状態の皆さんとは裏腹に、私のほうは視界がクラクラしてきて、立っていられなくなった。
とりあえず休憩しないとと思い、間切さんの隣に座る。
「もしかして、Aさんも陸酔いですか…？」
「んな訳ないじゃないですか…。ちょっとお酒一気に飲んでしまって…」
「えっ、酒酔いですか！？大丈夫ですか！？」
「大丈夫です、気分が悪い訳ではないので……ちょっと、休憩、します……」
ああ、瞼が重い。眠気がとてつもない。
五分だけ。五分だけ休憩したら部屋に戻ろう。そうじゃないとこの場から動けなくなりそう…
…………………
…………
……
どれくらい時間が経ったのか。
五分以上経ったか、或いはほんの数十秒くらいか。それすらも分からないが、右肩が何かにぶつかった感覚で目が覚めた。
「ん……」
「Aさん」
重い瞼を気力でこじ開けると、目の端に水車の柄の小袖が目に入る。この小袖は…
「あ……ごめんなさい、間切さ………」
間切さんにぶつからないよう、お尻をずらして距離を取る。なのに間切さんがその分詰めてきたのが分かった。今の動き、私に残された精一杯の体力を消耗したんですけど…。
「Aさん、ここだと風邪引きますよ。頑張って起きて部屋で寝ましょう？」
私の名前を呼ぶ声が聞こえるけど、それに応えられないほどの激しい眠気。抗えない。
「……まぎ、り……」
今晩はここで寝ます、そう伝える努力はしたけど伝わったかどうかは自分でも分からず、ただ私の意識が夜の闇と同化していくような感覚だけは全身で感じた。
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜！めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます！！私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります！まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました！！最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて！！しかも神作で！！！本当ありがとうございます！！大好きです！！ (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…！？恐縮です…！お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します！ (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます！完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます！鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です！キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます！どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています！ (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年9月4日 4時
