其の肆 ページ27
酒が飲めないんです、と疾風さんと義丸さんの声が聞こえた気がした。
“同じ物を食べ飲みすることで仲間とする”と聞かされた上で酒を飲み残すことは、捉えようによっては“あなた方と仲間になるつもりはない”とこちらが拒否しているような、大変な無礼を働くことになるのではないか。
隣の疾風さんが私の左腕を掴んで「やめとけ」と言ったが、右手でなみなみと注がれた盃を持ち、一気に飲み干した。
カーッと喉が熱くなって、酒の独特の匂いが鼻梁をガツンと突き抜けた。あちこちから歓声が上がる。
「これで!私も仲間だとお認め頂けますか!」
「いい飲みっぷりだなぁ!もちろん、Aを兵庫水軍の仲間として認める!!」
「ありがとうございます!」
「さあお前達も飲み直すぞ!今宵は目一杯楽しんで明日からまた頑張るぞ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
同じ物を飲み食いすることで結束力が高まるというのはどうやら本当らしい。皆さん更に盛り上がり、舟唄なんかも歌い始めている。
「こんの馬鹿野郎が!!」
「あべしっ!」
疾風さんに頭を叩かれて体勢を保てなかった私は両手を床にビタンッ!と音を立ててついた。
「二度と命を縮めるような飲み方すんじゃねえ!お頭があんな話をした後だったとしてもだ!
お頭は酒が飲めねえなら仲間じゃねえと見捨てるようなお方じゃねえぞ!!」
「………! すみません…」
「今日はもう休め。お頭には言っておくから」
「はい…夜風に当たってから寝ます」
「水いっぱい飲んどけよ」
私を
幸い、海賊さん達は内輪同士でどんちゃん騒ぎなので、私達のやり取りを見た人はほぼいないだろう。目撃した人がいたとしても、あの状況下では間違いなく私を心配してのことだと全員が思うだろう。
水軍館の外へ出ると、間切さん、蜉蝣さん、鬼蜘蛛丸さんが館の外壁にもたれてどんよりしていた。
「あれ…Aさん。抜けてきたんですか」
鬼蜘蛛丸さんが涙目で桶を抱えて三角座りしながら訊ねる。
「はい。疾風さんからもう休めって言われたので、夜風に当たってから寝ようかと」
「疾風の兄貴は優しいですからね。一緒に町歩きすると私の陸酔いを都度心配してくれますから」
「へえ…というか、鬼蜘蛛丸さんも陸酔いをされるんですね」
「そうなんです…うぷ」
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時