其の参 ページ3
私が刺股を拾い集めて渡そうとすると、留三郎が音にびっくりして「大丈夫か!?」と言いながら奥から様子を窺うように歩いてくる気配がして、浜君は焦り出す。
「っだ、大丈夫です!もう拾い終えましたァ!」
「…そうか?無理はするなよ?」
「ハイ!」
そして浜君は刺股を差し出していた私の腕ごと引っ張って、ズンズンと歩いてゆく。
「浜君?」
出入り口の死角になるところまで来ると腕は離してくれたが、代わりに浜君の顔がズイズイと近付いて、倉庫の外壁へと追いやられた。木の壁が背中に生温かい。
「な、なんか悪い事したかな!?」
「どういう事ですかッ!!!」
彼にしては珍しく声量を抑え、しかし勢いは感じる口調で私は責め立てられている。どんどん距離が詰まるので両手の掌で胸を押し返すようにしても勢いは止まらない。
牽制も虚しく、壁ドン状態に。
「なんて格好してるんですか…!?」
「ええっ?皆と同じ格好だけど…」
「同じじゃありません。私は男で、Aさんは女です!」
女はダメなのか?
以前、喜八郎と一緒に落とし穴に落ちてしまった時、文次郎君の前で上衣を脱いだら「男の前で!」って怒られたっけ。
確かに上衣を脱げば、腕なんかはほぼ丸出しだけど…
「腕?」
「いや、む……、言わせないで下さいッ!!!!」
胸?まあ形はよく分かるかもしれないけど。
記憶が正しければ、日本人が胸を恥ずかしがるようになったのは明治の頃だと思うんだけどな。
ん?そういえば花売りのアルバイトをした時、きり丸君が胸と尻がどうのこうの言ってたな?女性の胸にドキドキする人も少なからずいるって事か。
いや、だとしてもだ。
「浜君、この炎天下、長袖を着ての作業は倒れます無理です」
「そうかもしれないですけど!」
「それに、この状況の方が百倍恥ずかしいと思うんだけど…」
「あ!?浜先輩何してんですか!?」
彼が距離の近さを自覚すると同時に、責任感の男・富松作兵衛にこの状況を見られてしまった。彼からすれば仕事もせず話し込んでいるのは“無責任”だ。
「見かけねーなと思ったら!!サボって女口説くなんざどういう了見してんですかッ!?」
「ちっ、違、口説いてた訳じゃない!!」
作兵衛は距離を取った浜君と私の間に入り、私を庇うようにして説教を始めた。
「あ〜、私は手伝って来るね!」
お陰で私は逃げ出せた。
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玉虫厨子(プロフ) - 炭酸さん» わ〜〜!めちゃくちゃ嬉しいコメントありがとうございます!!私もタカ丸さん出てくる場面は筆が走ります!まだ先の話になりますがいつかはタカ丸ルートも書きたいので、どうか気長にお待ち頂ければと思います。 (9月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
炭酸(プロフ) - ああああああ面白すぎて一気に読んでました!!最高すぎます、神はここにいた、、、特にタカ丸君が出てきてくれる作品を今だに出会えてなくて、それがやっと出会えて!!しかも神作で!!!本当ありがとうございます!!大好きです!! (9月15日 2時) (レス) @page30 id: 5dbdfb3851 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - れなさん» て、天才…!?恐縮です…!お気に召したようで私も嬉しいです。完結まで宜しくお願い致します! (9月9日 2時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 文才天才すぎます、、めちゃくちゃ好きです、ときめきも笑いも盛りだくさんでとっても好きです、、これからも更新楽しみにしてます!完結までぜひついて行かせてください。 (9月8日 15時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
イリア(プロフ) - コメ返ありがとうございます!鹿之助さんや清八さんなど他ではなかなか拝む事が出来ないキャラを出して下さるのもすごく感激です!キャラが出るたびワクワクして読ませて頂いてます!どうか玉虫様のご無理のないペースでお待ちしてます、これからも応援しています! (9月7日 23時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年9月4日 4時