其の漆(伊作視点) ページ8
翌朝。
夜中は特にAちゃんの踵が落ちてくるでもなく、快眠そのものだったのだが、起き抜けにAちゃんの寝顔を拝することは叶わなかった。
その理由がこれだ。
Aちゃんは留三郎にぴったりくっついて寝ていたから。更に留三郎の左腕を抱き枕にして、指先は太腿の付け根、つまりほぼ股に挟まれていたのだ。
「留三郎、いつまで狸寝入りするつもり?」
「……バレてたか」
一番悪いのは留三郎だ。この状況を楽しもうと微動だにせず鳴りを潜めていたのだから。
目の下に薄らと隈があるから、夜中も何かしらあったのだろう。
「お前その状況楽しんでいるよね?」
「馬鹿言え。そりゃあ見た目は全忍たまが発狂するような体勢だろうよ。だが残念なことに俺の左腕は痺れて感覚ねえからな?
……つーか、何で伊作が怒ってんだよ?」
「だったら尚更腕を引き抜けばいいでしょ、どうしてそのままにしておくのさ」
「そりゃあ……、何でだろうな」
僕は留三郎の頭を小突いてAちゃんを引き寄せた。露出した左脚が冷えていた。
「もう、女の子がこんなに身体冷やして…」
掛け布団の中で抱き締めると、留三郎が突っかかってくる。
「お前だって!寝て抱き締めて布団被ったらもうそれこそ同衾だろうが!?」
「静かにしてくれよ、Aちゃんが起きてしまうだろ。僕は温めているだけ。お前と一緒にしないでよね」
「そう言って太腿撫で回してんだろ!」
「人聞きの悪い事言わないでくれ。冷えているから摩擦熱を起こしているんだってば」
「だったら俺が同じ事やっても良いな?」
「……お前は駄目」
「何でだよっ!?」
「何でだろうね、さっきの留三郎見たら触らせたくないと思った」
「ん……」
さすがにこれだけ煩く言い争っていれば目が覚めたようで、僕の腕の中で小さく身じろぎをする。そしてぼんやりと開かれた瞳に僕の顔を映す。
「おはよう、Aちゃん」
「……伊作君……?」
頭が早急に覚醒したようで、ぶわっと赤面して反対側に寝返りを打つと、今度は留三郎の顔が目の前に。
「とめっ……!? 起き抜けに男前の顔はほんと心臓に悪いからやめてー!!」
物凄い力で僕の腕を振り払って、逃げるように部屋を出て行ってしまった。
「お、男前って…」
「ゴッファ!」
留三郎が男前と言われて興奮したようで久々に鼻血を噴出した。
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時