四年い組の夜間護衛の段(喜八郎視点) ページ47
「帰る!」
腹を立てて外出着に着替え始めたのでAさんは慌てて顔を覆った。やったーデモシカさんお帰りでーす!
「喜八郎君、あなたに散々お世話になっている身で恐縮だけど、あまりに失礼だよ」
「申し訳ございませぇん」
ちぇ。どうして僕が怒られなきゃなんないの。
あの時確かにデモシカさんは布団の上から『おいで、Aさん』って発言したのを聞いたのに。
「私からも、申し訳ありません」
頭を下げて謝罪する。デモシカさんが悪いんだからそんな謝罪、意味ないのに。
「顔を上げて、Aさん」
さすがは忍者。早着替えでもう既に準備万端なデモシカさんがAさんの両肩に手を添えて軽く覗き込む。
それだけで殺意が湧くのに、Aさんが見上げるように視線を上げると、左肩に添えていたデモシカさんの右手は後頭部へと回り、掬い上げるように接吻をしたではないか!
「たっ…立花先輩ィィィ!!」
僕の叫びで隣室の立花先輩と潮江先輩が駆けつけるまでおよそ五秒。その間二人は口付けていた。間違いなく、人生で一番長い五秒だ。
「綾部の言う通り、
この口付けは今日の礼として頂いておくよ」
そしてもう一度、わざと音を立てて触れるだけの接吻をして、またね、と掠れた声で言い残し、戸口で棒立ちする潮江先輩を軽く押し退けて部屋を出て行った。
「っ、田村ァァァァ!!」
三木ヱ門は食堂でデモシカさんがAさんを迎えに来たと勘違いしていた一人で、後でそうではないと聞いていつもの調子に戻ったけれど、これはまた一波乱ありそう。
「大丈夫ですか?」
壁に背を預けてずるずるとへたり込んだAさんは、涙目で今にも湯気が出そうなくらい真っ赤だ。
「……おや、茹で蛸」
「見ないでえええ…」
自分の袖でAさんの形のいい口を拭う。デモシカさんの唇の感触が消えるよう、強く入念に。
「…痛、痛たたた、」
「それではAさんの唇が腫れてしまうぞ。一先ず私達の部屋へ行こう。立てますか?」
滝夜叉丸と僕とで脇を抱えて立たせようとすると、立てる立てる!と慌てて立ち上がったかと思うと、四年長屋まで走っていってしまう。
「おやまあ、相当恥ずかしかった様子」
「この場は先輩方にお任せして追いかけよう。転けないで下さいよーっ!」
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時